諏訪野ヒロ 迷作劇場
諏訪野ヒロ
無人島とおじさんと少女
前略、俺は今、無人島に居る。そして、ここに来る前の記憶がない。何故無人島ということが分かったかというと、既にこの島を一通り探索済だからだ。
まず、食料と寝床を確保しよう。さっき探索していた時に流れ着いてきた釣り竿をみつけたから、とりあえず釣りをしてみよう。
三時間後。魚はそれなりに捕れた。とりあえず今日の分はこれくらいでいいだろう。それにしても、よく流れ着いてきた釣り竿は壊れなかったよな。
食料はそこそこだし、次は寝床だな。どこかに洞穴でもあればちょうどよかったんだけど、人がいないか探索していた時にはそれらしきものは見当たらなかった。さて、どうするか。
「ぁ、ぁの・・・」
え?今声が聞こえたような。でも人がいないか探索したときは人どころか生き物もほとんどいなかったのに。
「すみません、そこにいるのは私の言葉がわかる人ですか?」
やっぱり聞こえた。二回も聞こえたなら幻聴の類ではないだろう。一体どこから声が聞こえているんだ?この声の主はどこにいるのか。
「俺はあなたの言葉が分かります。声の主のあなたはどこにいますか?」
返事がない。と思ったら誰かに後ろから服の裾をちょんちょんと引っ張られた。俺はその服を引っ張られた所を見てみる。すると、そこには十五、六くらいの年齢と思われる子がいた。
「え、君はどこに居たんだ?俺が人がいないか探索してた時には君は見かけなかったが」
すると、少女は
「私は少し前にここに流れ着いてきた。そしてさっきあなたを見かけた。この島で他の人を見るのは初めてだったから、どこに行っているんだろうと後をつけていってた」
なるほど、後ろにいたのか。それは気づかないな。
「あなた、名前は?」
「すまない、俺はどうやらここに来たとき記憶喪失になっているみたいなんだ、よび方は君の好きなようにしてくれ」
「じゃあ、おじさん」
おじさんかぁ。まぁ、この子からしたらそんな年齢なのかな。俺自身年齢も分からないけど、見た目からしてそんなもんだろ。
「君は?」
黙ってしまった。何かまずかったのだろうか。
「私も・・・」
あっ。さっきから声小さいから聞き逃しそうで怖いなぁ。
「私もおじさんの好きな呼び方でいい」
「そ、そうか」
まいったなぁ。なんて呼ぶか。
「レイ・・・なんてのはどうだ?」
「わかった。私はレイ」
これは、単にこの子が綺麗だったからなんだけど、呼び名としてはいいかな。
「おじさん、あなたと一緒にいてもいい?」
「あぁ、無人島で二人いるのに別々に生活してたら不便だろうしな。助けが来るまで一緒に生活するか」
「ありがとう」
そうして俺の、いや、俺達の無人島生活が始まったのである。
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