量産型の青春

楠 和巳

青春とは…

僕はふとこう考えることがある。


「青春とは何か」


部活に入りその環境の中、紆余曲折しながら

ある一つのゴールへ進むことか。

あるいは勉学に励み、ある程度の成績を残し

自分の将来への不安から目を背けることなのか。

それとも恋人と共に過ごす甘酸っぱい時期のことか。

もちろん「青春」をはっきりと定義するものはなく

その一人一人が「これが青春だ」と感じることができたのなら

それは間違いなくその人にとっての「青春」になるだろう。


その中でも大多数が送るであろう

「量産型の青春」

というものが存在すると僕は考える。

それは特に秀でたものを持たず

周りから見ても平均的な能力を持った者の多くが体験するだろう。

そして僕もその「量産型の青春」を送るつもりだ。


そんな僕は体格も、学力も、交友関係も至って平均的だろう。

別に今現在の自分に不満はないし、特に秀でてるものもないので

誰かとの競争相手に選ばれることはないから平和に毎日を過ごしている。

通っている高校は部活も盛んで、勉強に関してはそこそこの進学実績がある。

文武両道を成し遂げたい者にはうってつけの学校だろう。

ちなみに僕は小学校から続けている剣道部に所属している。


今は高2の初夏。蝉たちも忙しなくその羽音を鳴らし始めた。

部活も勉強も波に乗り出していい感じに学校生活を楽しめている。

新しいクラスは意外と顔見知りが多く新学期が始まる前の不安は払拭されていた。

授業が既に始まっているにもかかわらず夏休みについて熱く語る数学教師。

4、50代の決め台詞「俺たちの時はな…」を乱用しながら昔の武勇伝を語っていた。

分かりきったことだがその教師の話を真面目に聞いている者はわずかで

ほかの生徒は前もって配られていた課題を黙々とこなしていた。

窓の外に広がる青空はこんな話に付き合わされている

僕らに見せしめるような青さで光り輝いている。

そんな風景を教室の隅から眺めある人に目が留まる。


それは教室の入口付近に座り、黙々と作業を続ける寡黙な女子だ。

彼女は高校に入り知り合った人物である。

距離感としては近すぎず遠すぎずといった感じで

話すことの大半は業務連絡程度の話だ。

同じ剣道部に所属している為、試合や練成会の話がほとんどだ。

彼女は特段可愛らしい風貌でもなく、どちらかといえば不愛想にも見える。

ではなぜ彼女に目が留まったのか、それは単純である。


僕は彼女に片思いしているからだ。

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