第69話 揺れる心 四

 そして2人は、2ショット写真をいっぱい撮ったり、その洋館の近くの洋食レストランで昼ご飯を食べたりして、楽しい時間を過ごした。その間恵麻は和紀に歴史の知識を披露しようとしたが、やはり和紀の知識の深さには勝てず、悔しい思いをしていた。

 「あっ、もうこんな時間…。

 そろそろ帰らないとですね。」

「もう夕方か…。では今日は帰りましょっか!」

そうやって和紀たちが話をしながら散策しているうちに、日が暮れる時間になっていた。

 「でも今日は結局和紀さんには勝てなかったですね…。」

「…別に気にしなくていいと思いますよ!人それぞれ知っている、得意な分野と苦手な分野ってありますし…。」

「でも和紀さんに勝ちたかったなあ~!」

「では今度は恵麻さんのよく知っている分野の所を…、」

そう言いかけた和紀の腕を、恵麻がつかむ。

 「私、何か悔しいんです。私、本当に和紀さんのことが好きです。それで、好き過ぎて悔しいって言うか、なんて言うか…。

でも、和紀さんは私のこと、どう思ってるんですか?」

そして和紀は、自分でもびっくりするようなことを言う。

「僕も好きですよ。」

「和紀さん?」

次の瞬間、和紀は恵麻をそっと抱き寄せていた。

 「僕も恵麻さんのことが好きです。恵麻さんはちょっとムキになることもあるけど、根は純粋で可愛らしい人だと思います。

 だから、僕は恵麻さんの隣にいたいです。」

「和紀さん…。」

「じゃ、帰りましょっか!」

「はい!」

少しの間抱擁した後、2人は手をつないで、一緒に帰り道を歩いた。

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