第61話 病 七

 「泣かないで和紀。」

「ごめん。」

「謝らなくていいよ。

 …だからね私、向こう側に行く『その日』を落ち着いて迎えたい、今はそんな風に思ってるんだ。

 それでね、私和紀に言いたいことがあります!」

「…何?」

「私が向こう側に行ったら、2人は別々の所で暮らすってことだよね?

 それで、もう2度と逢えなくなるでしょ?

 だから和紀、これから先和紀に他に好きな人ができても、私は和紀のことを責めません。

 その好きな人と和紀が幸せになれたらいいなって思ってるんだ。

 でも、和紀はちょっと奥手な所があるから、頑張らないといけないよ~!」

「そんな日なんて…来ないよ。」

冗談っぽく語尾を上げてそう言う理沙に和紀はそう返す。

 「僕には理沙が全てなんだ。だから他の人を好きになるなんて、僕には考えられない。

だから君がいなくなっても、僕は君を愛し続けるよ。」

「それは嬉しいけど…。

 じゃあ、もしもの時の話ね!とにかく、私は和紀に幸せになって欲しいから…。」

そう言って理沙は和紀に近づく。

 そして和紀は、繋いでいた手をさらに強く握った。

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