第56話 病 二

 ※  ※ ※ ※

 「そ、それは…本当なの!?」

和紀は理沙の言葉を聞き、思わずそう理沙に訊き返した。

 その口調は明るかったが、内容はとても深刻なものであった。

 「うん、本当だよ。私、余命宣告受けちゃった。

 それで今年の12月が、私がこの世にいられる最後になるんだって。」

「そ、そんな…。」

 思えば最近の理沙は時々学校を休んだり、デートに誘っても、

 「今日はちょっと用事があって…。」

と、断ったりすることが多くなってきたようには感じていた。しかしその理由がまさかこんな深刻なことだとは…和紀は想像もしていなかった。

 「いままで黙っててごめんね。何か、言い出しづらくって…。」

「うん…。」

と和紀は相槌を打ってみたものの、次の言葉が出てこない。

 『理沙はどうしてこんな大事なことをもっと早く言ってくれなかったんだろう?

 僕のことが信頼できなかった?』

それは、理沙と逢えなくなるかもしれないというショックからの逃避行動であったかもしれない。その「告白」はそれほど、和紀にとって重いものであった。

 しかし、和紀はそんな考えを持った自分を一瞬で責める。

 『何考えてるんだ僕!1番辛いのは理沙じゃないか!

 何自分の痛みをごまかそうとしてるんだ!もっと理沙のことを考えてあげないと…!』

 そして気丈になった和紀は、理沙にこう告げる。

 「ごめんね、理沙。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る