初期調査

 アメリカCDCにアラートが入ったのはその数日前だった。即座に専門家を派遣、調査することを決断した。CDCからフロリダへ派遣されたスタッフは、直ぐに事態が深刻なことに気付き、天を仰いだ。


 現地の保健当局と協働し各病院を調べた結果、重篤な肺炎の患者が、同時多発的に数多く発生していたのだ。いくつもの病院が必死にこれらの患者を治療していた。


 急に重篤な肺炎を起こす点から、SARS-CoV-2の系統が疑われた。しかし、既存のSARS-CoV2の系統とは大きく違う点があった。感染の伝播速度があまりに速すぎるのだ。理由はわからない。既に市中に多くの感染者がいるだろうことも容易に推察される。


 感染力が強い、悪質なウィルスなのは確かだ。CDCはホワイトハウスやフロリダ州と連携し、過去繰り返されたCOVID-19の経験から、フロリダ州は即座にロックダウンした。州境も閉鎖され、州軍・合衆国陸軍がロックダウン下のフロリダ州の維持のために動員された。感染は封じ込めが期待された。


 しかし、状況はそれを許さなかった。


 第一に、フロリダは米国きっての観光地で、全米・各国との行き来も非常に盛んだ。つまり、既に全米、各国に伝播している可能性がある。実際、数日後には全米に広がった。

 第二に、派遣されたCDCの職員がアトランタやワシントンに戻ると、しばらくして、その地で爆発的な感染が起きたのだ。CDCの職員はもちろん、フロリダ保健当局も、感染対策は充分にしていた。数度のCOVID-19を経て、彼らは充分に慣れていた。既存の感染対策が効かなかった。


 ここに至って、CDCとワシントン・ホワイトハウスは、既存のSARS-CoV-2とは違う、恐ろしいウィルスだと悟り、大統領は冴えない演説し、全米がロックダウンされることになった。


 そして、いまだ、新しいSARS-CoV-2の正体は掴めなかった。

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