51th The Humanity.

その夜遅く、俺はまた自室で椅子に腰掛けていた。


「アリス、いるか?」


しばらくすると返答があった。

『はい。マスター。』


「その後の様子はどうだ。」


少し間があった。

『残念ながら、うまく言っていません。戦績は5,432戦して僅かに6勝です。』

「そうか。」


俺は椅子に座ったまま窓を見た。真っ暗な空にわずかに星々のきらめきが見える。俺は一呼吸置くと言った。


「本当にありがとうな。アリスには感謝してもしきれない。アリスにはこれまで何度も助けてもらってきた。」

『いえ。それが私の役目ですから。』

アリスは答える。


深く吸った息を吐き出すと俺は言った。

「俺は今回、んで構わない。」

『な、、、何を』


俺は静かに言葉を返した。

「これは冗談じょうだんじゃない。」

立体映像のアリスが顔を歪める。


「俺はもう十分じゅうぶん救われた。

 俺の命は捨ててもいい。

 そして

 できれば

 勝ってくれ。」


アリスはただ静かにこちらを見ていた。


月明かりがほのかに外を照らしている。

真っ黒な森からフクロウがホーホーと鳴いているのが聴こえた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る