不和の果実は微笑まない

加湿器

Pl.

 全身を苛む痛みと、肌を滴る感触。涙はとうに枯れて、私はただ茫然と身を投げ出していた。引き裂かれた衣服の隙間から冷たい風が差し込んで、心の奥までが冷え込んでいく。


 やがて、去っていった男たちと入れ替わりに、三人の人影が近寄ってくるのが見えた。


「あーあ、かわいそー。でも、あんたが人のモノに唾つけんのが悪ぃんだからね? 」


「もうこわーいオニーサンたちに絡まれたくないだろ? 大人しくしとけって。」


「……犬にでもかまれたと思って、諦めてほしいっす。」


 口々に、そんな言葉を投げかけてくる、小柄な人影。もはやその言葉に意味を見出す気力もなく。


 ――私はただ、心を閉ざした。

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