慈悲

 ひとを許すのは、ひとに許してもらいたいからです。だから私は生きてきて、なんの憚りもなしにひとを許そうとしてきました。

 それ故に、そうでなかったときには、ひどく裏切られたような気になって、恐ろしくなって、しかしそれが単なる勘違いでしかないのだとわかったとき、どうしようもなく自分が、許せなくなってしまうのです。

 それでも自分のしたことに後悔はなかったと信じなければ、きっと未來永劫報われることはないでしょうから、せめても、相手にその虚構を気取られてはなりません。

 それでも、それでも、と。あなたがもしも私の立場にあったなら、あなたにもこうであって欲しいと、虚しくも願ってしまうのです。

 

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