第72話 クリスマスデート②

「な、七菜美?」


目の前のベンチにいるはずの七菜美はそこにはいなかった。

くそっ!どうゆうことだよ?!

最悪の考えが頭を過ぎる。

いてもたってもいられるはずもなく、俺はその場から走り出す。

ここのイルミネーションは公園を大きく一周囲んでいる。

頼む、七菜美、無事でいてくれ……

そこからは、全速力で走った。

周りの人からは、迷惑と思われているだろうが、今はそんなことを気にしてられなかった。


「七菜美……どこだよ……」


周りを見ながら、とにかく走る。



***

春樹がトイレに行ってから、なんだか私もトイレに行きたくなったのだ。

確かあっちに行ったよね……

とりあえずさっき春樹が走って行った方に歩き始めた。

どうせ鉢合わせになるから連絡はいっかな……


五分ほど歩いたが、トイレは見つからない……

ま、まさか……

どうやらここに来て私の超方向音痴が発動してしまったらしい。

なんて迷惑な彼女なんだ……

ため息を漏らしながら、春樹に連絡を取ろうとスマホを取り出した。

メッセージアプリを開くと、急に画面が真っ暗になった。


「え?!」


お昼ご飯の時のことを思い出した。


『七菜美、充電やばくないか?』

『ん~大丈夫でしょ!春樹がいるし!』

『そうか……ならいいんだけど……』


残念ながら何も大丈夫ではなかった……

何してんだろ私……

来た道を戻ろうとしたが、私の方向音痴っぷりはすごく、来た道すら分からなかった……

どうしたらいいのかも分からず、近くのベンチに座り込む。

春樹に迷惑しかかけてないんじゃないか

そう思い、自分を責めていたらなんだか悲しくなり、そっと涙が溢れた。

なんでこんなに泣き虫なんだろう……

自分で自分に失望していると、イルミネーションを見ている人たちが、端に寄り、真ん中の道を開けていた。

どうしたんだろう?

ベンチから立ち上がり、覗いてみる。

そこには、見覚えのある服の男が走っていた。


「はあ、はあ……あっ!七菜美!!」


春樹はそう言ってこちらに駆け寄ってきた。

春樹の顔を見て、安心したが、息を切らす姿を見て、申し訳ない気持ちが心を満たした。


「春樹……ごめんなさい」

「謝るなって、無事でよかったよ」


そう言って微笑む彼の顔は、私の心を安心と暖かさで満たした。

いてもたってもいられず、思わず抱きつく


「トイレに行こうとしたけど迷子になって連絡しようとしたけどスマホの電池が切れた感じか?」

「その通りです……」

「相変わらずの方向音痴だな。あははは」

「笑わないでよー!」

「まあ、そんな七菜美も好きなんだけどな」

「ちょっ?!ず、ずるいよ……」

「なあ七菜美、周りの視線が熱いから、そろそろ離れないか?」


春樹にそう言われ、一旦離れ、周りを見渡す。

春樹の言う通り、周りからは熱い視線が送られていた。

状況を理解し、顔が一気に赤くなっていく。

そんな私を見て、春樹は周りに軽く頭を下げ、私の手を引いて歩き始めた。


人が少ないとこに来て、ようやく歩くスピードが落ち着いた。


「七菜美、実を言うと、かなり心配した。ケータイの充電とかは気を付けてな。まー七菜美を置いて行った俺も悪いんだけどね……」

「ごめんね。自分の方向音痴を侮っておりました……でも春樹もあんまりトイレ我慢しないでね。」

「あーいや、実はトイレに行きたかっただけではなくてな……」


そう言って、春樹はカバンからマフラーを取り出した。

そして、私の首にそっと巻き付けた。


「メリークリスマス」


そのマフラーは、とても暖かかった。

布の暖かさだけではない、違う暖かさが感じられた。

私も慌てて、カバンからプレゼントを取り出す。


「かぶっちゃったね。メリークリスマス」


そう言って、私もそっとマフラーを巻き付けた。

そして、お互い顔を合わせそっと顔を近づけ、唇を重ねる。

数秒温もりを感じ、そっと顔を離していく。


「そろそろ帰ろっか。」

「うん!」


そう言って、再び手を繋ぎイルミネーションを歩き見しながら駅へと向かって行った。




「じゃあ、またね。おやすみ」

「うん。いろいろありがとね。おやすみ」


家まで送ってくれた春樹と別れを告げ、玄関に向かっていく。

もらったマフラーに顔を埋め、そっと微笑みながら……





~あとがき~

クリスマス編、終了いたしました。

もう少し伸ばしたかったのですが、今自分に彼女がいないため、なかなか長くかけません。

理想だけではここまでで限界でした笑

物語は、少しづつ終わりに近づいて行っています。

これからもよろしくお願いします。

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