第61話 ダブルデート②

バシャーン

「うひょー!気持ちーな!」


俺と秋大は泳いでいた。

一方、七菜美と楓はぷかぷかと浮かんでいる。


「おい!春樹、ウォータースライダー行こーぜ!」

「でも七菜美が……」

「楓がいるし、横に係員がいるだろ。……少し話したいことがあるんだ……」


少し小さな声で言った。

2人で話したいことなんだろう……


「分かったよ……七菜美、少しウォータースライダー行ってくる。何かあったら叫んでくれ。すぐに行く」

「分かった。楽しんできて!」


やはり不安はあるが、秋大がこう言うのはなかなか珍しい。何か悩みがあるのだろう。


「で、どうしたんだよ?」

「あ、実はな……最近楓と一緒にいても楽しくないというか、なんか前ほど気分が上がらないというか……」

「倦怠期ってやつか?」

「そうなのかもな……」

「そうか……お前と楓の話だからとやかく言うつもりはないが、後悔はすんなよ。じっくり考えろ」

「ああ……そうしてみるよ……」


まさかこんなことになっているとは……

あの2人はずっとラブラブかと思っていた……

そこから話の事は一旦忘れ、ウォータースライダーを全力で楽しんだ。



**

「あのさ……七菜美ちゃん……」

「ん?」

「私、秋大が好きか分かんない……」

「え……」

「最近一緒にいても楽しくないというか、前ほど気分が上がらないというか……分かんないんだ……」

「そっか……私が言えることはないと思う。経験したことがないから……でも、後悔はしないようにね」

「そうだね……ありがとう!」

「なんか食べよっか!」


こうして近くの屋台に向かった。



**

秋大とウォータースライダーを楽しみ、七菜美達と合流する。


「腹減ったー昼飯食おうぜ!」

「いいね!そうしよ!」


ん?なんか楓も変だな……

まさか……


昼飯を買う時、少し七菜美と2人になりたいと言い、七菜美を連れ出した。


「なあ、楓なんか言ってたか?」

「村上君の事が好きかわかんないって……もしかして……」

「そのもしかしてだ……このままじゃまずいな……七菜美、何とかしようぜ」

「あったりまえよ!」


彼女の笑顔は、俺のやる気をマックスまで引き立てる。

やる気マックスになったのはいいが、どうすればいいのか……

無理に近づけてもどうせすぐバレる。

どうすれば……

その時、近くから喧嘩が聞こえた


「最近なんなのほんと!そんなに私といて楽しくない?!どうしたいのよ!」

「…………」


声の正体は楓だった。

マジかよ……

予期せぬ事態に、戸惑う。


「もういい!帰る!!」


そう言って楓は走っていった。


「待って!」


七菜美がその後を追いかける。

楓は七菜美に任せよう。

それより俺は……


「どうすればいいんだよ!!」


秋大がその場に倒れ込む


「楓は七菜美が行ったから大丈夫だ。そこじゃ邪魔になるぞ」


そう言って秋大の手を引き、人の少ない端の方に座らせる


「ちょっと待ってろ」



「ほら、これでも食おうぜ。好きだろ?」

「ああ……ありがとう……」


そう言って秋大に買ってきたホットドッグを渡す。


「どうすればいいんだよ……」

「秋大はさ、挫けそうな時誰がそばにいた?」

「え?……春樹か?」

「はは、そう言ってもらえるのは嬉しいんだがそれは違うと思うぞ。」

「じゃあ……」

「そうだ。楓だよ。お前が苦しんでる時、楓はいつもそばにいただろ?」

「…………」

「絶対に仲直りしないといけないわけじゃない。だけど、俺はお前達がいつも仲良くしてるのを見るのが楽しい。それは七菜美も、駿介も同じだ。何より、楓の大切さを知ってるのは1人しかいないがな……」

「悪い……なんか大切な物を見失ってた。行ってくる……」

「いや、置いてくなよ!」


ホットドッグをすぐに食べ、走る秋大の背中を追っていく。

横顔にはうっすらと笑顔が見えたので、ほっとした。



~あとがき~

まさかの展開と思う方もいるのでは?!

と思って書きました。

次は秋大視点で参ります。

よろしくお願いします!

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