第9話
桜の精は語り始めた。
「あれは70年ほど前の事になります。涼しくなり始めた秋の事でした。庄ちゃんの住んでいるこの家を改装する事になり、庭も無くしてしまう予定の為私を切ることになりました。」
過去の桜庭家中庭。桜の木の前に立ち塞がる1人の少年がいる、幼少期の庄之助だ。
『ダメだよ!この木は僕の友達なんだ!お願いだから切らないで!』
「当時まだ小さかった庄ちゃんは何度も訴えてくれました。しかし、伐採は中止にならず庄ちゃんのご両親立ち会いのもと工事が開始されました。すると。」
『やめろ!その木に少しでも傷つけてみろ! 僕は死んでやるからな!』
「なんと庄ちゃんは台所から包丁を持ち出しそう叫ぶと一目散に走り去ってしまったのです!庄ちゃんのご両親は血相を変えて工事を中止させ、全員で庄ちゃんを捜索しました。無事に庄ちゃんは見つかり怪我も無く保護されました。もちろんご両親にはこっぴどく叱られましたが。二度とそんな事をしないように私と庭は残して家を改装する事になりました。この庄ちゃん失踪事件により私は切られず一命を取り留めたのです。」
──現在に戻り、スレイブは呆れながら。
「はは、小さい頃の庄之助さん、やることが滅茶苦茶ですね。」
「ふふふ、本当ですよね。」
二人は顔を見合わせ笑った。スレイブは一呼吸おき、咳払いした。
「話は分かりました。しかし残念ですが、私には人の死を左右させる様な力はありません。」
「私の命を使ってください!」
「あなたの?」
「はい、出来ませんか?」
「そんな事したらあなたは。」
「出来るんですね?」
「あ!いや……その。」
「出来ないんですか?」
スレイブは観念した様に。
「多分、出来なくないです。」
「だったらお願いします!」
「代わりにあなたは消えてしまう事になりますよ?」
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます