第2話

そう言って庄之助は一雄の頭を撫でた。

庄之助はゆっくりと立ち上がり、一度伸びをすると何があったのか一雄に質問した。


一雄は学校での言い合いを話した。


「なんじゃ、そんな事か。」


庄之助は笑いながら言った、一雄の横にもう一度座り一雄を自分の方へと向かせて話を続けた。


「いいか一雄、よく聞きなさい。わしはな見た目が強そうとか、喧嘩が強いとかそんな事を強い男と言っとる訳ではないんじょ。」


「どういう事?」


「ワシが一雄にも、他の子達にも1番強くあって欲しいと思う所はなぁ、ここなんじゃよ。」


庄之助は自分の胸に手を置きそう言ったが、一雄は分からないと言った顔をしている。


「わからんかのぅ、心じゃよ。」


「心?」


「どんなに苦しい事があっても、どんなに辛くても、何度でも立ち向かえる、強い心じゃよ。」


「……。」


一雄は黙って庄之助の顔を見上げている。


「まだ、ちょっと難しかったかのう。」


一雄は首を横に振っている。


「今はまだ分からなくてもいいんじゃよ、ワシの言ったことは心の隅にでも覚えておいてくれ。」


「うん。」


「いい返事じゃ。」


庄之助はこの時思った。一雄に本当に強い心を持った姿とはどんなものか見せてやりたいと。簡単に逃げたり諦めたりせず、どんな困難にも立ち向かう強く、勇ましい後ろ姿を。その姿はどんな言葉よりも、一雄を強くし、勇気を与えてくれるだろうと思った。しかし、今の庄之助ではそれを示せるチカラがなかった、若さが……。身体は重たくて思うように動かない、少し走れば息は直ぐにきれてしまい、腰は痛く足も上がりにくくなってきていた。


『情けない、何が強い心だ!』


庄之助は心の中で、そう叫んでいた。


「おじいちゃん、どうしたの?」


今日にうつむき考え混んだ庄之助を心配した一雄が声をかけた。


「ああ、すまんすまん。」


「大丈夫?」


一雄は庄之助がどこか苦しいのではないかと心配そうにしている。


「大丈夫じゃよ、心配はいらん。」


一雄は安心したのか笑顔になった。


「心配かけてすまんな、お詫びに面白い話をしてやろうかのう」


「うん。聞かせて!」


「この桜の木について話してやろう。」


そう言うと庄之助は庭にある大きな桜の気を見上げ語り始めた。


つづく

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