鈍感なあの子の兄と嗣臣【三人称視点】
「嗣臣ぃ、あげはの気持ちが向いてない内はダメだって言ってんだろぉ…?」
「ごめん、つい」
あげはが退室したその後、琥虎と嗣臣がヒソヒソ話…もとい兄による牽制が行われていた。
「グイグイ行くとあげは怖がるからな? アイツ見た目は遊び慣れてそうだけど、その実初心なんだぞ? キスすらしたことないんだぞ?」
「それは知ってる」
嗣臣があげはに好意を抱いていることに気づいていないのはあげはだけである。その本人が筋金入りの鈍感娘なため進展は見られない。
「嗣臣、お前のことはいいヤツだと思うし、大事なダチだけど、あげはを傷つけるようなことは許さねぇからな?」
「…琥虎って意外とシスコンだよね」
「妹を守ってなにか悪いか?」
「ううん、別に」
肩を組んでいた腕を離すと、半開きになった扉に視線を向ける琥虎。あげはの気配が遠くなったことを確認するとため息をついた。
「それにしても嗣臣は年上の女が好きなのだとずっと思ってたんだけどな」
「好みというわけじゃないよ。たまたま、家に泊めてくれるのが大体年上の女性だっただけで。向こうから誘われた事しかないし」
苦笑いして否定する嗣臣には少々耳が痛いお話らしい。彼は少し前まで今以上にやんちゃしていたので、それを指摘されると色々と心に刺さるようである。
「ふぅん…? ま、今は遊んでないみたいだからいいけど……」
──あげはにバレないようにな。余計にこじれるだろうから。
そう琥虎が忠告をすると、嗣臣は肩を竦めていた。
その後階下に降りると、リビングにて好物の花丸プリンを頬張るあげはが嗣臣を瞳に映した瞬間、ぎくりと警戒する仕草を見せたことによって、嗣臣が悪手を踏んだと後悔することになるのであった。
嗣臣のプリンを奉納することでなんとかあげはの意識がプリンに向いたが、それから一週間位あげはにギクシャクされ続けたという。
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