おい。


「おい」

 呼び掛けられた。誰もいない深い森の中。どうせロクなものじゃない。タチの悪いミトラだろう。無視する。

「おい」

 また呼ばれたが、無視。夜になる前に街に着く。良かった。通行許可証を得ようと、門の男に声を掛ける。

「おい」

 喉から出たのは、俺のものじゃない声だった。

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