380球目 高校球児に白肌は似合わない

 山科やましなさんがバックしていく。ついに背中をピッタリとフェンスにつけた。入らないでくれー。



「アウト!」



 もう少し打球が伸びたらホームランだった。危ねぇ、危ねぇ。



 2番の花名はなめに対しては2球ボールを続けたところで、ど真ん中へ投げた。またもセンターに打球が飛ぶ。



「アウト!」



 これも山科やましなさんの守備範囲だった。スタンドから黄色い歓声が上がる。



山科やましなさーん、ステキ!」


「次もセンターに飛んでぇ―ん」



 山科やましなさんは白い歯を見せ、女子達を見ながら帽子を取って振る。サイクルヒット打ったことで、彼の人気はご当地アイドル級だ。



「3番ピッチャー刈摩かるま君」



 ついに因縁の相手との対決だ。奴は前の試合で猛打賞もうだしょうを記録し、1年ながら3番に抜擢ばってきされている。



 初球はバッターの手に当たりそうな威嚇いかく球のサイン。奴は涼しい顔で俺をじっと見ている。高校球児にふさわしくない白肌を、泥だらけにしてやりたい。



「ボール!」



 奴は少しのけぞって、威嚇いかく球を見送った。「危ないなぁ」と無表情で言って、再び構える。腹立つなぁ。



 2球目はど真ん中ストレートのサイン。打てるもんなら打ってみろ!



 奴はバットを振りぬき、ライナー性の打球が俺の頭上を越える。またまたセンターへの打球だ……。



(続く)

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