304球目 クソ親父と話したくない

 学校に泊まり込みの俺達は、家庭科室で朝食を取る。朝食前に、下駄箱の新聞受けへ行き、新聞を読むのが俺のルーティンだ。



 今日の朝刊を聞けば、5回戦の組み合わせが載っていた。



 良徳りょうとく学園VS昇陽しょうよう姫路ひめじ  明石あかし11:30

 浜甲はまこう学園VS兵庫連合  明石14:00

 未来科研VS村上学院  姫路9:00

 冠光かんこう学院VS須磨すま薫風くんぷう  姫路11:30

 学園都市VS明石天文てんもん学館がっかん  姫路14:00

 臨港りんこう学園VS神戸こうべ星光せいこう  塚口つかぐち9:00

 伊丹いたみ一VS神戸ポートタウン大付属  塚口11:30

 香水こうすい学園VS森脇もりわき工業  塚口14:00



刈摩かるまの後かー」



 甲子園優勝経験がある高校同士の対戦は、かなり激アツだな。スタンドでじっくり見させてもらうぜ。うん? 電話だ。



 胸ポケットのスマホを取り出せば、電話番号が表示されている。一体、誰だろうか。



「はい、もしもし」


「おう、るいか。久しぶり」



 クソ親父のしゃがれた声だ。今さら何の用だよ。



「どなたでしょうか?」


「おいおい、父親の声、忘れたのかよ。俺だよ、筒夏つつが英機ひできだ」



 もう2度と筒夏つつがるいと名乗りたくない。



「わかってるよ。何の用? 俺忙しいから、手短に言って」


「ああ、すまん。5回戦進出、おめでとう。今日の試合も頑張れよ」


「言われなくとも、頑張るよ。!」



 もう俺は親父の野球道具じゃない。浜甲はまこう野球部の未来を担うピッチャーだ。それにしても、親父にしては珍しく、あっさり褒めてくれたな。以前のあいつなら、4回途中で降りるとは情けないと、小言の一つでも言ってただろうに。



「良かったな、るい。じゃあな」



「ああ。2度とかけてくんなよ」



 俺は通話を切り、新聞を家庭科室まで持っていく。親父の猛特訓のおかげで、グル監&津灯つとうの猛特訓に耐えられた。



 それだけはマジで感謝してるよ。



(続く)

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