217球目 アオサギはペットに出来ない

 津灯つとうの顔は大真面目だ。鳥化の超能力を持っているならまだしも、普通の人間が鳥になるのは難しい。



烏丸からすまさん! あっちのベンチの上に乗ってるアオサギ連れでごれまずがよ?」


「任せろガァ! おーい、アオサギー!」



 烏丸からすまさんが一声呼べば、アオサギが大きな翼を広げて飛んできて、華麗に降り立った。鋭く長い口ばしが怖いな。



「あたしとアオサギの魂を入れがえで下さいだよ!」


津灯とつさんの頼みなら、何のこれシギ!」



 烏丸からすまさんの妖術によって、アオサギの魂が津灯つとうの口へ、津灯つとうの魂がアオサギの口ばしの中に入った。アオサギが入った津灯つとうが暴れるので、ベンチの奥へ回収する。



「でも、その羽じゃ、バット持てへんブフ」


 

 本賀ほんがは眼鏡をかけ直して、アオサギの姿をしげしげと観察する。



「ソー、ミスター・ヒボシ、ウイングをヒューマンのアームにチェンジして下さいブハ」


「了解」



 火星ひぼしの両手がアオサギの羽にふれれば、彼の銀色の肉片がスライム状に付着して、たちまちにして人の腕に変わる。自分の体を変形させるだけでなく、相手も変えられるとは、恐るべしオラゴン星人。



 それにしても、人の手が生えたアオサギは気持ち悪い。悪魔にこんなヤツいそうだな……。



「バッターラップ!」



 津灯つとうアオサギは左手を上げて、打席へ向かう。あの軽い体なら、本来の神スイングが発揮されるだろう。



「でも、何で鳥になったんだろフガ」


「ミス・ツトーは、ミスター・バンバの前にランナーを置きたかったんですブハ」


「そうか。今日の試合で頼れるのは番馬ばんばさんだけ。番馬ばんばさんがいくら打っても、3点差を追いつくには厳しいフガ」



 津灯つとうの意外な発想力と東代とうだいの洞察力、烏丸からすまさんの妖術、火星ひぼしのトランスフォームなどなど、やはり浜甲はまこう野球部は強い。



 甲子園に行くためにも、ここで苦戦しちゃいけないな。



(続く)

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