1 腹ペコ

「お腹が空いた。何か食べ物はないだろうか?あーでも、これ以上食ったら家を追い出されるかもしれない。いやいや無理だし、我慢できない。そんな簡単に我慢出来るなら悩まない」


 少年は冷蔵庫を漁り、食べられる食材を一心不乱に調理する。出来上がったのは納豆チャーハン、野菜炒め、お肉をふんだんに使用したチーズハンバーグ、そしてマヨ唐揚げおにぎり。


 少年のお腹の虫が鳴く。お腹が空いてしょうがない、出来上がった料理を口にした少年は至福の表情を浮かべる。


「美味しいが止まらない!将来は料理人になれたらいいな。だけど、絶対怒られるだろうな。でも今は考えるのはやめよう、目の前の料理に失礼だし」


 納豆チャーハンを食べると元気が出る。チャーハンだけでも美味しいのに納豆が混ざったときの美味しさは病みつきになる。それに材料も安上がりだし。


 野菜炒めはキャベツ、もやし、玉葱、人参を塩コショウで味を付ける。野菜の甘味を感じながら、シャキシャキとする歯応えは野菜だからこそ感じる美点である。


 中からとろーりとチーズが溢れる。ハンバーグの合挽き肉は牛が七、豚は三の比率で作っている。ふっくらとした柔らかさとなり、牛と豚の旨味が味わえる味わい深いチーズハンバーグとなった。


 刻んだ唐揚げをマヨネーズで絡めたものをお米で包む。しかし、今日はお米で包む前に隠し味に七味を少量マヨネーズに加えて唐揚げに絡める。ピリッとした刺激が加わり美味しさが増す。手軽で作れるマヨ唐揚げおにぎりは最高である。


 モグモグと食べながら少年は頬が緩みぱなしである。今後、彼を待つ困難を考えれば今は幸せを味わって英気を養う時間である。


「美味しかった。食材となった生き物達に最大の感謝を、生きる糧をありがとう」


 満足した少年は横になり、昼寝を始めた。それからしばらく時間が経って、少年の両親が家に帰って来た。両親が冷蔵庫を開けると何もない!それどころか食材を全て食べ尽くされていることに気づいた。両親は少年の部屋をノックして開ける。


「お前また家の食糧を全部食べたな!ふざけるなよ。俺が必死に働いて買った食材を、お前マジでふざけるな!とっとと起きろ」


 少年が目を覚まさないことに両親の怒りが増し、両親は少年のお腹を蹴った。少年は蹴られた痛みで目を覚まし、両親の怒りの形相に震える。


「もうお前はこの家から出ていけ。うちにはもうお前を養うお金はない」


「ごめんなさい、許してお母様、お父さん」


 少年は泣きながら両親に許しを乞うが、両親は無理やり少年を抱え込み、家の外へ運ぶと家に鍵をかけ少年を閉め出した。


「…お腹空いた。どうしよう?」

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