第117話 計測不能
ワークギルドは大きな建物で、多種多様な人たちが出入りしている。俺たちは受付に行き、求人を出す手順を聞いた。
「上のフロアーに求人受付用のカウンターがありますので、そちらに必要事項を記入して提出してください」
どうやら一階は全て求人を求める人の為のカウンターのようだ。俺たちは言われた通りに上のフロアーに上がる。
「求人を出したいのだけど、このカウンターでいいのか」
ジャンがそう聞くと、暇そうにしていた中年の女性が慌てて対応する。どうやら求人を求める人は大勢いるようだけど、求人を出す業者はそれほど多くは無いみたいだ。
「はっはい、そうです、そちらの書類に記入して提出してください」
ジャンは言われた通り書類を手に取ると、パッと内容を見て、サッサと凄い勢いで記入した。
「ほれ、これでいいか」
「はい、確認させていただきます……仕事内容はライドキャリアの搭乗員と操縦者、それと魔導機のメカニックですね、条件は搭乗員は特に無し、操縦者はルーディア値1500以上、メカニックは実務経験3年以上と……給与は搭乗員が月、700ゴルド、操縦者は20000ゴルド、メカニックは30000ゴルドですね、備考欄は、食事寝床付き、ボーナスの可能性有り、遺族手当有り、死亡時は遺族に10万ゴルドの遺族年金が支払われると……死亡時の想定があると言うことは危険な仕事なんですね」
「そうだな、戦場で戦う商売だからな、危ない仕事ではある」
「わかりました、こちら危険度Aで登録させていただきます」
「募集してどれくらいで集まりそうだ?」
「募集人員は搭乗員が10名、操縦者が1名、メカニックが3名ですね。メカニック以外なら三日もあればかなりの人数が応募してくると思うのですが……」
「やっぱりメカニックは難しいか」
「はい、魔導機のメカニックはどこも不足していますので、かなりの人気業種です」
「30000じゃ安いか」
「そうですね、優秀なメカニックを求めるならその倍は提示した方が良いと思いますね」
「じゃあ、50000に書き換えてくれ」
「わかりました、メカニックの給与が50000に変更と……」
「じゃあ、三日後にくるから、よろしく頼むわ」
「はい、それではお待ちしています」
これで求人を出すのは終わったけど、やはりメカニックの募集は難しいようだな、後ろで話を聞いていたライザの顔が引きつっているのが不憫で仕方ない。
「よし、求人は終わりだ、それじゃ早速勇太の計測に行くとするか」
「本当にどうでもいいんだけどな……」
俺の意思など無視して、ジャンはルーディア値を計測できる施設を調べ、そこへ向かった。
「ルーディア値の計測ですね、調べるのはどなたですか」
「こいつです、早急にお願いします」
「それではその台の上に乗ってください」
俺は言われるままに丸い台の上に乗った。
「はい、息を吸って……ゆっくり吐いて……はい! そこで息を止めてください!」
何かの装置を見ながら、計測技師が動揺している。
「こ……これは……」
「どうした、幾つなんだよ!」
「も……申し訳ありません、数値が出てこないです……どう言うことだ?」
「おいおい、計測機が古いんじゃねえのか?」
「何を言いますか、この計測機は十万まで測れる最新式ですよ」
十万まで測れる最新式って、前に測った時もそんなこと言ってたな。
「ジャン、前にも同じこと言われたんだよ、十万まで測れる最新式だって、その計測機でルーディア値2って言われたから、そう言うことなんじゃ無いか」
「そうか、勇太は地球人だから最初に計測したのはラドル召喚所か! 確かにあそこの計測機を超える物なんてどこにも無いぞ……」
ジャンもようやく俺のルーディア値を計測するのが無理だと納得してくれそうな感じになったのだが、計測技師が余計なことを言い出した。
「ふむ……確かにラドル召喚所の計測機を超える計測機などどこにも無いだろうが、一つだけ、もしかしたらそれを超えるかもしれない計測機を持っている人物に心当たりがありますよ」
「何だと! そいつは誰だ!」
「バラヌカの郊外に住む、変わり者の老人です。我々街の計測技師に、もし、この計測機でルーディア値を測れない人物が現れたら、ワシのところへ来るように言いなさいとその老人に言われていたのですが、本当にそんな人物が現れるとは……」
「よし、勇太、そこへ行くぞ!」
いや、もういいって……そう思ったがジャンは計測技師から老人の詳しい場所を聞いている。地図なんて書いて貰って……本当に行くきだな。
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