第19話 足元の暗闇
淀んだ黒色が深く静かに波打っていた
映る白色が黒を際立たせていた
白色はのっぺりと、斑に線を引く
黒色はゆらゆらと、色を浮かべていた
私は何も見ていなかった
淀みもまた、私を映すことは無かった
反射も共鳴もなく、ただそこにあり、そこにいた
吸い込まれるような黒色は、そこにあれど留まることなく
浮かぶ白色もまた、動けどもそこにはなかった
全てはそこにあってそこにない
私は何を見たのか、何を見ているのか
淀みが大きく動いて何かが跳ねた
どぽん。大きな音と共に全てが歪んだ
私はそこに何がいたのか、わからなかった
そこにいつからいたのかすら、わからなかった
ずっといたのだろう
黒い淀みの中に
じっとしていたのだろう
白い絵の具の下に
淀みはまた、全てを隠してそこにある
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