第5話 魔法の言葉

靴が1足ありました。

とても素敵な靴でした。

踵があって、小さくて、可愛らしい靴でした。

女の子はひと目で気に入りました。


素敵な靴。少し履きにくくても、だんだん馴染んでくるでしょう。

お気に入り。それだけでどこまでだって歩けます。


ある日、女の子は誰かに見せることを思い立ちます。

きっとあの男の子なら褒めてくれるでしょう。

靴に似合う服を選んで、リボンをむすびます。

ルンルン気分でどんどん歩いていきます。


いい天気ね、ご機嫌いかが?何気ない挨拶の間にも、女の子はいつ自慢しようかドキドキしています。

男の子は、そんな女の子の気持ちには全く気がつきません。

女の子はドキドキに耐えられず、自分から話しだします。


今日の靴は素敵でしょう?とってもお気に入りなの。

男の子は答えます。そうなんだ。纏足みたいに見えるね。


女の子はショックでした。自分の素敵な靴は、男の子にとっては特に魅力のない靴だったのです。


女の子の気持ちは沈んでしまいました。

お気に入りの靴。素敵な靴。

なんて重い靴。小さい靴。

どこまでだって歩けたのに、足がすっかり痛くて仕方がありません。


たった一言で変わる靴。

ただ、可愛いだけで、大好きな靴だったのに。

一言が無かったら、ずっと素敵なままだったのに。


魔法の呪文はいつもすぐそばにあって、人を幸せにも不幸にもするのです。


あなたにはどんな魔法がかかるのでしょう

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