第63話 アクリス

「アクリス様というのは?」

「エルフの女王様がこの街から退去されてから、この街を治めている女性です」

クレーネの街は四方を城壁に囲まれているが、ある面の一部が開けている。

そこは街の背後の湖に繋がっており、湖の一部は城壁の中にまで入り込んでいた。

オアシスには至る所に泉がいていたが、湖はそれ以上に多くの水をたくわえており、このオアシスの地下水脈の豊かさを物語っていた。

街に入り込んだ湖のほとりに屋敷があり、住居としてだけではなくある程度は砦のような役割を果たしているらしい。

以前はそこにエルフの女王が居を構えていたが、今はそのアクリスという女性が屋敷の主になっているとのことである。


「アクリス様は元々屋敷でお勤めをしていた方です。モンスターに侵入されこの街が多大な被害を受けた後、エルフ達は撤退しましたが、アクリス様は逆に単身敵陣に乗り込みました。乗り込んでからしばらくするとモンスター達は撤退を始めたのです」

「あの人はエルフの血が混じっているのかもしれないよ。あんまり年を取らないから」

この頃には別の街の人も会話に加わってきた。

「エルフの血!? エルフと人間が一緒になることがあるのか?」

オレは思わず声をあげた。山間やまあいの故郷の街ではエルフを見かけることはまずなかったからだ。

「この街の住民はエルフとの混血が多いのです。なんでも大昔に北の方から移ってきたそうで。ただハーフ・エルフも女王様に付き従って、ほとんどがこの街を出て行ってしまいました」

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