第94話 魔王様、無事キャンプを終えられ、新たな娯楽を考え込む。

「良いでしょう。私も料理を作り始めますか」

「お、何を作るのかな?」

「さんまのかば焼き缶詰を使って、ピザを作ります」

「へぇ……」

「残ってる材料頂きますよ」



こうして、一人分の材料で作ればいいだけならば簡単な、缶詰を使ったピザを作ることにしたのだった。

まずは市販のピザ生地の上にピザ用チーズをふりかけ、その上にさんまのかば焼きをそれぞれに割って均等に並べ、小葱を切って半分はその上に掛ける。

そして焚火で熱したフライパンの上に用意したピザを乗せてアルミホイルで蓋をしつつ、焚火の弱い場所を見定めて10分から15分程焼いていると、中々に良い匂いがしてくる。

チーズがいい感じに溶けたら火からフライパンを下ろし、残りのネギを散らして入れて、オリーブオイ大匙一杯ほどに一味唐辛子を小匙一杯分入れて混ぜていたものを上からかければ完成だ。

なんとも和風だけど洋風のピザが出来上がり、いい香りがする。



「僕、祐一郎のご飯食べたい」

「ご自分の分はご自分で作らないとキャンプとは言いませんよ」

「同じの作るから教えて?」

「構いませんよ」



こうして魔法使いの分も監修しながら作り方をレクチャーしつつ作らせると、多少不格好だが美味しそうなピザが出来上がった。

ホッとした魔法使いに我も派手に失敗されなくて良かったと安堵しつつ、いざ失敗したり成功したりで調理スキルはモロに出たものの、実食となった。

アキラの作った料理も美味しく、流石だなと思いつつ舌つづみを打っていると、最早それは食べ物なのかゴミなのかと言う料理を作った者たちは各自成功した人たちからお恵みを貰う事で食事としていたようで、我も一つ渡した。

そのついでにと言う訳で、小さなクーラーボックスを取り出し、一人まだ熱を持っているフライパンを使い、燻製ソーセージを軽くあぶるようにして火を通し、鞄に入れていた爪楊枝を用意して人数分刺して、その横に人数分の燻製チーズを持って戻ると、皆興味津々だった。



「中野先生も如何です?」

「なになに? 匂い的に燻製チーズと燻製ソーセージっぽいけど」

「私が家で作りました。如何です?」

「ん、一個ずつ貰おうかな!」

「部長たちも是非、1人1個ずつありますのでどうです?」



こうして群がって我の作った懇親の燻製チーズとソーセージを食べた面子は雄叫びを上げながらビックリしていた。



「へ――東君はこういうのも家でするんだね!」

「中々に趣があって面白いですよ。作る手間はありますが」

「この前燻製キットの大型の奴を親父さん達から貰ったんだよな」

「ええ、そちらでは燻製卵も作って好評でしたね」

「燻製卵かー……美味しいだろうなぁ」

「嬉しい贈りモノでしたので、奮発して燻製ハムも作りましたよ」

「本格的~」

「何かと物価があがっているからこその、手間が掛かっても出来る娯楽がしたいんです」

「ははは、東君は着眼点が面白いな! 普通なら楽をして娯楽をって考える人が多いのに」

「楽をして娯楽出来るのは金がかかりますからね。それなら、手間も楽しめるもので美味しいものが皆も喜べる最高の娯楽ですよ」

「やだ、私先生だけど、東君に恋しちゃいそう」

「コンプラは守りましょう、そして犯罪です」

「デスヨネー」

「年増に好かれてもね……」



ポツリと呟いた魔法使いの言葉をキッチリ聞き取っていたルルリアは背後から魔法使いへ対してこれ以上ない殺気を出していた。

まさか聞こえていたとは思っていなかったらしく、魔法使いは大量の汗を笑顔でかいていたが、自業自得と言う奴だ。

女に年齢の事をアレコレ言うのは、オル・ディールでもこちらの世界でもタブーだと言うのに……。



「でも、この燻製ってビールが欲しくなるわ~!」

「父や祖父はビールを飲みながら酒の肴にしてますね」

「でしょうね!!」

「手間を楽しむか……それが出来るならキャンプも楽しめるよ。鞄一つに自分の選りすぐりの道具を詰めてキャンプを楽しむ、もしくは、不自由を楽しむと言うのも醍醐味だ」

「そうですね、私には合いそうです」

「東君なら次の部長も務まりそうだ!」

「確かに」

「東君なら……」

「副部長には是非アキラを推しますよ」

「俺!?」

「料理が出来る人材確保です」

「納得」

「は? 僕が料理できないとでも!?」

「「出来るのか?」」

「……出来ないけど」



我とアキラに問われ、魔法使いは小さくなってイジケタ。



「食べる専門は良いですが、料理はある程度出来たほうが人生豊かになりますよ」

「え――……」

「まぁ、美味しく食べて下さる方がいてこその豊かさですが」

「だよね――!!」

「俺は小雪が料理作れない時は作ってやりたいから料理覚え始めたからなぁ」

「はいはい、リア充乙」

「全くだぜ、リア充乙」

「その彼女と言うのが私の妹なのですが」

「「「「ロリコン野郎」」」

「ははは! 先輩たち嫉妬が激しいですよ?」



笑顔でスルー出来るアキラの強さよ。

いや、これこそが彼女持ち故の強さと言う奴だろうか。いや、彼女持ちだと言う余裕だな。

それを行ったら我も忘れられがちだが彼女持ちなのだが……。

聖女との仲は今もラブラブだ。

ただ、学校が忙しいらしく中々会えないが、お互いに浮気は無いと思っている。

それくらいにはラブラブなのだ。



「さて、昼ご飯も食べたし少しキャンプ場を回ってきても良いし、現地解散でもいいけど、どうする?」

「昼までしか借りられないのですよね?」

「そうね」

「なら、テントの片付けまでは出来るようにしておかねばなりませんね。それから散策しても問題は無いでしょう」

「東君頼りになる~!」

「部長なれるよ、絶対俺が部長にさせてあげるから!!」



と、結局部長から次の部長は我だと言われ、嫌な気はしなかったが色々と大変そうだなと思いつつテントの片づけをし、鞄に仕舞っていく。

綺麗に鞄に全てが入るとスッキリするのだが、珍しくアキラが手間取っていたので手伝い、その後我とアキラで魔法使いのテントを手伝い、事なきを得た。

それから解散となり自転車に乗って各自学校に到着して現地解散となったのだが――。



「秋までにテントを綺麗に張れるようになったら、勇者を連れてきても良いですね」

「楽しそう!」

「双子もきそうですが」

「五月蠅そう……」

「テント用品をコツコツ集めて行かねばなりませんね」

「そうだねぇ……次は何を買おうかな」

「私は焚火を起こすのが欲しいですね。器の形になっている奴があるんですよ」

「へぇ。一般的なのとは違うんだね」

「結構重たいんですが、キャンプ場に落ちている枝を使って本格的にやってみたいので」

「なるほど」

「まぁ、一つずつ集めていくと言うのは楽しいです。いつかは一人旅もしてみたいですね」

「一人旅かー……」

「本格的に寺に入る前には、一度はと思っています」

「人生経験って奴だね」

「ええ、折角の人生ですから」



そう語りながら家路に到着すると、自転車を止めてリュックを背負い家に入ると――。



「魔王! GW初日に中学の部活でキャンプとはお疲れだったな! 土産はないのか!」

「松ぼっくりがありますよ」

「裏庭にあるじゃないか!!」

「そう言えばそうですね、乾燥している時に拾ってきますか」

「そうだね、焚火の付け方勉強したいし」

「なに? 焚火をするのか? なら焼き芋を作ろう、焼き芋を!!」

「焼き芋は落ち葉で作るからこそ味わいがあるんですよ」



そう言って松ぼっくりを勇者に渡すとブスくれていたが、中学始まってのGWだ。

まずは何から手を付けようかと、顔は無表情だがワクワクしながら片付けを行い、作務衣に着替えると納屋から七輪を取り出し庭に持ってくると考え込む。

七輪は二つある。

網は洗えば使えるし、炭は安くスーパーで買える。



「偶には炭火焼の何かを作るのもアリですね」



そう思うと網を外し七輪を綺麗にして網をごしごしと洗って使えるようにすると、炙った魚を使った料理を作るのもアリだと思いつつ作業に移ったGWの日の事――。




+++++++++++++++++++++

無事キャンプを終えて帰宅後七輪を取り出し考え中の魔王様。

果して出来上がるのは何なのか!!


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