第84話 魔王様、ケルベロス達の好みと昼休みのカースト作りに疲弊する。
昼休みと言えば、最大グループを作る為の修羅場と言っても過言ではない。
これでクラスカーストが出来るとも言えるし、学校生活がどう進むのかは昼休みの戦い次第だろう。
そんな中我たちはと言うと――ケルベロス達に囲まれてクラスメイトと一緒に過ごすというのは難しかった。
魔法使いはあからさまに嫌そうな顔はするし、ケルべロスのマリアも魔法使いを敵視しているのは目に見えて明らかだった。
「マリア、恵さんに喧嘩を売らない。次売ったら許しませんよ」
「でもでも~?」
「でも、なんです?」
「ごめんなさーい」
「まぁ、でもマリアちゃんが恵に喧嘩売りたくなるのも分かるよ。男なのに美少女顔だもんな!」
「確かに声も高いですが」
「僕は普通だよ。確かにちょっと美少女みたいな顔だけど」
「プッ 自分で女顔って言ってるしウケルー!」
「どこかの誰かみたいに阿婆擦れみたいな恰好はしてないし」
「あば……っ」
「あのね? ボクと祐一郎は寺育ちなの。そんな阿婆擦れみたいな恰好をしてる女性とは普通は一緒にいないの? 分る?」
「~~~失礼ね!! アタシのどこが阿婆擦れよ!!」
「男漁りが上手そうな服装で吠えられてもね~? なに? 僕を誘ってるの? 悪いけど趣味じゃないんだけど」
「東様――!!」
「確かに服装に関しては言えますね。風紀が乱れます」
「きちんと着ます」
「そうしてください」
そう言うとケルベロスマリアは服装を整え、化粧ばかりは取れなかったが、クラスの一般女子と同じ見た目に変えることは出来た。
魔法使いグッジョブである。
「私くらいのスタイル持ちになると男が放っておかないって言うのに……。アキラもアキラで全然靡かないって凄いわ」
「俺、彼女一筋だからね。祐一郎の妹は兎に角かわいいんだ!」
「そのマフラーも手作りですよね。良かったですね、大事にしてやってください」
「小雪からの手作りマフラーとか……告白して良かったって思うよ」
「僕はフラれたけどね。フラれた僕の前で自慢するとかね? 結構えげつないよ」
「えー? 恵フラれたの~?」
「次の出会いがあるって~!」
「メスは一人じゃないって!」
「「「言い方」」」
「でも彼女持ちってのは羨ましいよな。俺もその内良い肉付きの彼女が欲しい」
「分かる、出来れば尻のデカイ子な」
――元がケルベロス出会った頃の名残だろうか。
好みのタイプが結構偏っている気がする……。
犬視点と言うべきか、何と言うべきだろうか。
「んでもって、毛艶が良くってさ」
「分かる! 後良い匂いがあれば最高な!」
「アタシは誰よりも強いオスがいいわ! 強いオスこそ最高よ!」
「「「だから言い方よ」」」
「東様には彼女はいらっしゃるんですか?」
「いますよ。小学校の低学年からずっと付き合ってます」
「「「凄い」」」
その相手が聖女としったら三人ともその場で倒れそうだが、今は言うべき事ではないだろう。
ましてや、アキラの彼女であり、我の妹がまさか勇者だとは思いも寄らないだろう。
知ったら戦いを申し出るか倒れるかのどっちかだろうが、会わせるのすらコワイ。
「良いオスって必ず売れてるのよね~……残ってるのはいっつも弱いのばっかり」
「良いメスもだよ、売れ残ってるのはなぁ……」
「そうだよなぁ……」
「私たちにはその辺りは良く分かりませんが、良き出会いがあると良いですね」
そんな事を言いつつお弁当を食べている訳だけれども……。
我の作った弁当はそんなにうまそうに見えるのか、それとも鼻の良さで分るのか物欲しそうに見ている三人が少し面倒くさい。
魔法使いのお弁当には海苔で「ガッツ」と書いておいたので、彼なりに少しだけ気合を入れ長あらこの三人に挑んでいるのだろう。
「美味しそうな弁当ですよね」
「もしや、東様がお作りになったとか?」
「家での料理担当は私ですからね。弁当くらい作りますよ」
「朝も早いしね……正直昼が怠い」
「私は弁当を作りますから朝5時起きですよ?」
「寝るのもその分早いじゃん」
「ダラダラ起きているのは好きではありません」
「健全と言うべきか、不健全と言うべきか……枯れてると言うべきか」
「そんな事を言う恵さんには、明日から弁当を作りませんよ」
「ごめんごめん」
「でも、俺も祐一郎のお弁当食べたいな……月幾ら出したら作ってくれる?」
「そうですね、月額3000円も出して貰えれば作りますよ? お弁当箱とお箸は下さい」
「やった――払う払う!」
「「俺達も作ってください!!」」
「私も欲しいです!!」
「あなた方とはもう少し仲良くなってからにします」
「「「え――……」」」
こうして、アキラから月3000円出して貰ってお弁当を作る事を約束した訳だが、アキラもアキラで「恵みたいにメッセージ作ってくれよ!」等と言う始末。
まぁ、それ位は苦ではないのでやってやろうかと思っていると、毎日メッセージ作るのも怠いな……と思ったのは内緒にしておこう。
「祐一郎のご飯は美味しいからな! 小雪にも偶に教えてるんだろ?」
「ええ、あの子にも色々手伝わせたりしながら教えてますよ。小雪は和風煮込みハンバーグが得意です」
「俺大好き!!」
「いずれ結婚することがあれば作って貰えると良いですね」
「だな!!」
「あ――リア充が鬱陶しい!!」
そう言って叫ぶ魔法使いには申し訳なったが、その内魔法使いにも良い人は現れるだろう。
それこそ、年上の良い女性がだが。
ケルべロス達はパンを食べつつ色々喋っているが、クラスを見るとどうやらあらかたお決まりのメンバーと言うものは出来上がった様だ。
我は特に気にはしないが、我たちの場合三人で一つのグループと思われていそうだな。
そこにプラスで三人たまに入るが。
クラスカーストと言う言葉も正直好きではない我にとっては、ただの順位付けに近いものでしかなく、上だから偉い、下だから悪い、と言う考えは正直幼稚でしかない。
脆弱な考えと言うか、脳みそが子供のままで止まっているというべきか、違うな、歴史的に退化しているといって過言ではないだろう。
退化したそこにいるつもりは毛頭ない。我たちは我たちで好きにやらせてもらおう。
そんな事を思いながら、その日の昼食を終え家路に着くわけだが――魔法使いが学級委員と言う事もあり、帰りを待っていると早速クラスの男子に絡まれた。
いや、絡まれたと言うべきなのか? なんだろうなこれは。
「東とか言ったな」
「そうですが?」
「恵様とはどういうご関係だ?」
お前こそどういうご関係だ?
と言いたいのをグッと我慢した。
どうやらこの男子グループは魔法使いの見た目が好みらしく、出来ればお近づきになりたいという感じだろうか?
「幼少期から一緒の寺で住んでますが?」
「では、頼みがある」
「なんでしょう」
「恵様の写真を御恵み下さい」
「………」
こんな時、どんな顔をすればいいのだろうか。
確かに魔法使いは誰が見ても美少女の顔をしている。
男子がこうなるのを何度か見たことも経験もある。
しかし――。
「本人に聞くのが一番だと思いますが?」
「恥ずかしくて言えるわけ無いだろう!?」
「そうだぞ!! 恵様を前にすると前かがみになっちまう!!」
「祐一郎、こいつら変態か?」
「そうかも知れません」
「「「変態っていうな!!」」」
少々時間がかなりそうな問題に発展してしまったようだ。
魔法使いが帰ってくる前にカタをつけねば――大変なことになってしまう。
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お越しくださり有難うございます。
両腕腱鞘炎です!
一話のみ本日アップします。
学校カーストって私の時代では無かった言葉ですね。
あったのは「根性焼き」とか「鉄板焼き」とか物騒なモノばかりです。
リーゼント頭は闊歩してますし、短ランもよく見かけました。
夜の暴走族は何時もの時間。みたいな……。
中学校同士の抗争とかも良く起きた時代です。懐かしい。
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