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 家にももう帰りたくない。

 私のことをみんな馬鹿にするの。大きな声で罵るの。

 

 私は必要のない人間なの。

 

 大きなお屋敷に住むのは嫌。

 大きなお家を持っていてもお金があるとも限らないし、優しくてあったかいご飯が待っているとも限らない。血が繋がっていても愛してもらえるわけでもないの。


 なんで優しいお父様は亡くなったのかしら。


 どうして、

 どうして私を抱きしめてくれなかったの。


 ショーウィンドウに映る綺麗なお洋服が欲しくてたまらなかったわ。

 買えなくてもよかったの。ただ欲しいっていうわがままをちょっぴり言えるだけでよかったの。口に出せるだけでよかったの。子供が夕飯に今日はハンバーグが食べたいって言うように。それだけでよかったの。


 辛いことなんてたいしてないはずなの。

 私はわがままで贅沢な醜い人間よ。

 悲しいことばかりなはずじゃないのにどうしていつも満たされないの。

 

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