第五話:偶然のグレネード
理玖に言われるがまま進む。
グルグル回りすぎてここがどこか分からない。
「おい、理玖、今ってどこに向かって歩いてるんだ?」
「一応出口に向かって歩いてるで! ただ、そろそろ敵と会うはずやけどなぁ……」
「理玖! あれ、敵じゃね?」
「ほんまや! やるやん! ちょうどいいし、大翔撃ってみいや!!」
「任せとけ!」
緊張する。
銃底をしっかりと肩にあて、サイトを覗き込む。
しっかりと頭に狙いを定めて引き金を引いた。
カチッ
「あれ? 弾が出ないぞ?」
「アホ! チャンバーに弾入ってないやん! ちゃんとマガジン詰めたらコッキングレバー引かな!!」
チャンバー?
コッキングレバー?
「なんだそれ?」
「これやんか! 弾、撃ち切った時とかは、ここのコッキングレバーってのを引いて、銃の中に弾入れやなあかんねん!」
理玖は、俺の持っているAKを奪うと、ちょうどマガジンが刺さっている上あたりのレバー(コッキングレバーと言うらしい)を引くと俺に返した。
「はい、これで弾撃てるようなったわ。次からはこういうことをエレベーターで確認しーや!」
「ごめん……」
そうこうしているうちにさっき狙っていた敵はどこかへ行ってしまっていた。
「そんな落ち込んでやんと、はよ追うで!」
「次こそは任せとけ!」
俺たちはさっきの敵がいた場所へと向かった。
―〇―〇―〇―〇―〇―
「あ! いたで! さっきのやつら!」
前の方に歩く2人組が見える。
「ほんとだ、俺の腕の見せ所! 任せとけ!」
「僕は左やるから、大翔は右側頼むな!」
「おっけ! 了解!」
さっきと同じように、銃底を肩にしっかりと当てて構える。
しっかりと照準を定めて……
「撃つで! せーの!!!」
バンッッッッ
2人が撃った弾は無事に敵の頭に当たったらしく、前に立っていた2人は、木箱へと変わった。
「おっしゃ!!!! 1キル!!!」
思わず握りしめた拳を突き上げて、ガッツポーズ。
「初キルおめでとーやわ!」
「あざす! てか死んだらあんなふうに木箱になるんだな」
「言うの忘れてたわ! まあ、こんなにリアルな訳やし死体そのままやったら結構やばいからあーゆー風になるんやと思うで!」
「まあ、死体を漁るのは気持ち的にも嫌だしな……」
倒した木箱のもとに、向かいながら言う。
「せやなー、まあゲームやしこのくらいの表現の緩さがいいわ。めちゃくちゃリアルすぎてもちょっと嫌やしな。てか待って!こいつめっちゃ装備美味しいやん! これ全部大翔持っていき! 装備こいつ結構強いから!」
「いただきまーーす」
木箱から銃とアイテムを拾い上げ、それをインベントリにしまい込む。
「リアル志向やけどこういうところは便利になってるの、ホンマにこのゲームのいいとこやと思うわ!」
「確かになー」
ほのぼのと装備を漁る。
そんな慢心が命取りだったのか、
ダダダダダダッ
狭い通路に腹に響くような銃声が鳴り響き、横にいた理玖が倒れる。
「くッッ」
とっさに銃声のした方向に撃ち返しながら近くの曲がり角まで走りこむ。
照準なんて合わせていないので、弾がどこに飛んでいるかも分からない。
逃げてきた通路から足音が聞こえる。
ポケットからとっさにグレネードを取り出すと、ピンを抜いて放り投げる。
ドンッ、キィンッ
グレネードが爆発する。
終わったか……?
恐る恐る通路を曲がると木箱が二つ。
「あ、理玖……」
恐らく足を怪我していて逃げ遅れたであろう、理玖もろともグレネードは吹き飛ばしていた。
「漁るか……」
そう考えたのも束の間、再び前の通路から足音がする。
足音の数的に二人だろうか。
「おいおい……こっちは初心者だぞ……勘弁してくれ……」
呟きながらも、足音の方向に走る。
「こうなれば突っ込んで死んでやる……! 案内役の理玖もいなくなったしな!」
ダダダダダダダ……!
足音が聞こえた方向に飛び出しながら弾をまき散らす。
相手もまさかこちらから来るとは思っていなかったようで、一瞬うろたえる。
「もしかして勝った……?」
何発か被弾はしたようだが、ギリギリ死んではいない。
「回復しないとやばいな……」
すでに視界が赤く染まっている。
インベントリから自分の状況を確認すると、
HP:90/500
状態異常:出血、骨折
出血:一分毎に10ダメージ
骨折:移動速度減少
「これは、絶望臭いなぁ」
回復も全て理玖が持ってるし、マジでどうしよう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます