第44話 冒険者資格剥奪

冒険者ギルドに入って来た『焔の剣』の4人。


「おいおい、ギルド長ぉ!メイが泣いているのはどう言う訳だぁ!」


「不正をしたので、冒険者ギルドのルールに則り、解雇にしただけだ」


「なにぃ、メイが不正なんてするわけないだろぉ!」

ギルド長に文句を言っているミナトが、俺の存在に気付いた様だ。


「・・・ん? ユウマぁ!てめえ、ノコノコとこんなところに顔を出しやがって。メイが泣いてんのは、てめぇの所為かあああああ!」


ミナトは威圧を込めて俺を睨むが、レベルもそこそこ上がり、実戦も経験した俺は平然とミナトを見返す。


「すかしやがってえええええええ!て、てめぇの所為で、何もかも上手くいかねえんだよおおおおお!」


逆切れかよ!


ミナトが俺に向かって走って来て、振りかぶって拳を突き出す。


俺は亜空間のバリアを張って、黙って見ている。


パシッ!


ミナトの拳は解体所のおやっさんが手の平で受けた。


「おい、冒険者ギルド内で暴力は感心せんな」


「誰だぁ!てめぇ!」


え? 解体所のおやっさんを知らないの? 


「解体所のトモヤだ」

おやっさんは澄まして言う。


「はぁ!解体所のジジイが余計な事をするなぁ!」


おやっさんの胸ぐらを掴もうとした、ミナトの左手をギルド長が掴んで阻んだ。


「待て!ミナト。俺もお前に用がある」


「なんだ、ギルド長が何の用だ!」


「そうよ!私の解雇も撤回しないと、『焔の剣』は別の都市のギルドに行っちゃうよ」


いつの間にかメイがミナトの横に来た。


「おいおい、ミナト達は儂の温情で、Aランクに留めておいたんだ。移籍出来んよ。なぁミナト」


「ちっ、まあそうだ。それよりメイの解雇は確定か?」

ミナトはメイに確認する。


「そ、そうなの・・・」

メイは俯き無言になった。


「ふ~ん」

ミナトは面倒臭そうな顔でメイを見ていた。


「ミナト、儂の話も聞いて貰おうか」


「ここで話して良いのか?」

ミナトは周りを見渡す。


一連の騒ぎで、冒険者ギルド内にいた冒険者が、周りに集まっていた。


「良いだろう、いずれ周知する必要があるしな」


「周知ぃ?」


「『焔の剣』は冒険者証剥奪の上、国外追放とする」


「なんだとぉ!」

「何でよぉ!」

「理由を言って欲しいわ」

「そうよぉ!」


魔法使いアオイと弓使いヒマリと回復士ユイナも、ミナトの後ろに来ていた。


「ユウマを置き去りするだけではなく、Bランク冒険者のリュウセイを、無理矢理囮にして逃げたんだってなぁ」


「リュウセイだと? そんな証拠が何処にあるんだよ」


「リュウセイ!出てきな」


ギルド長がリュウセイを呼ぶと、受付の奥の扉からリュウセイと、その後ろに4人の冒険者が現れた。


「よくも囮にしてくれたなぁ」

リュウセイがニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「冒険者資格剥奪だってよぉ」

「良い気味だぜ」

「威張りくさりやがって」

「明日には都市からもいなくなるぜ」

「せいせいするな」


見ていた冒険者達がこそこそ話していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る