第四話 街まで続く砂漠道

広大な砂漠で舗装された砂漠道をひたすら歩き街を目指す二人と一羽


「うーんおかしいわね」


先ほどからサーナはしかめっ面で右腕についているバンドを操作していた。


「どうかしたのか」


隣を歩く放浪人がバンドを覗き込みながら訪ねた。


「あなたに関する情報が全くのってないのよ。少なくとも犯罪歴はないみたいだけど、それ以外は全く。というかジャーバンドすら知らなかったのは驚いたわ」


あーと声を出しながら放浪人は神の言葉をおもいだした。


『よいか今までの常識を捨てなければこの世界で生き残ることは不可能!ありのままをうけいれよ!』


高笑いで占める神。

細かいことを気にしない方がいいということだろうといまさらながら噛みしめる。

考えこむ放浪人にサーナは怪訝な顔をした。


「なによ。何か思い出したの?実はジャーバンド持っているとか」

「いや、ちょっと考え事しただけだ」

「ふーん。まぁいいけど」


首を横に振る放浪人を放ってサーナは再度バンドを操作した。

するとプロフィールの画面に移動し始めた。


「サーナ・ナチョス」

「そっ、ジャーバンドには自分の健康状態とか能力、勲章とかいろいろ教えてくれる機能がついてるの。ほらこれとか」


さっきの名前だけで後はUNKNOWNと描かれている殺風景の放浪人の情報と違い事健康状態や能力、今までやってきた経歴、はたまた魔法の欄だろうか特に雪の結晶のマークの横にびっしりと記述されていた。


「俺と違ってみっちり書き込まれてやがる…」


フ……まるで履歴書だな。

書ける人間はみっちり書けば有利な世界はどこも同じ!


「すごいでしょ。これが学園トップクラスの実力よ」


サーナは胸を張る違いがよくわからない。


「俺に見せた氷以外魔法は使えるのか」


何気ない放浪人の質問にサーナはうっと言葉に詰まった。


「つ、使えないことはないけど…わ、わたしの適性が一番高いのは氷だから

今は!主に使いこなしてるのは氷魔法だけよ。便利よ。水にも応用できるし

他の魔法や魔術だってそのうち学園でもっと身に着ける予定だけど」

「適性…?」


見知らぬ単語の連発に放浪人が首をかしげると

サーナはハハーンと見透かしたように笑う。


「なるほど。さてはあんた」

「なんだ」


全てを悟ったような顔で放浪人に詰め寄り


「ど田舎村の人間ね。だって私の話聞いても理解してなさそうだったし

いくら記憶をなくしても多少わかるはずだもの。学園に行かない人間というより

わからなかった方ね」


ドヤ顔しながら的外れの回答をする。


「どういうことだ」

「ふふーん。あんたのことだいたいわかったわ。まっ最近だと行かない人は珍しくもないってよく聞くから。試験も難しくなってるし適性試験に落ちた人。

適性があるのにあえて受けなかったってのもいるわね。学園よりも自分の好きなことでお金をかせいだり」

「そうだ。魔法やその学園のことも全くわからんからな」


放浪人はサーナの言葉に適当にうなずく。嘘はついていない


「やっぱりね!流石わたし!これで記憶のヒントになったんじゃない。感謝してよね。それにしてもさっきのゴロツキを追い払った時見るに格闘の才能すごいわね。剣闘士とか兵士とかにも向いてそう」

「まぁ腕には自信あるからな」


※神のゴットトレーニングスクールのおかげ。あっここ神様に教えてもらったところだ

思い出すと放浪人はガクリと肩を落とした。そんな放浪人を見かねて心配そうな顔をするサーナ


「ええ。何落ち込んでるのよ…そうよね記憶を失っていく当てもない……あっそうだ!ちょうど明日から学園が始まるからだからあんたのこと学園に紹介しといてあげる!そしたら学園に入学できるかも」

「紹介?うーん」


放浪人はサーナを上からしたまでじろじろ見た。小柄の身長。そして崖


「俺の年齢で入れるのか」


その言葉にサーナはキョトンとした表情


「何言っているの、私とたいして年齢違わないようにみえるわよ」

「え……」


放浪人は確認するように顔や体を確認した。

特に変わりはない。死んだ時と変わらない容姿。違いは鍛え抜かれた肉体だ。

死んだのに何故筋肉がついているのかそして何故そのままの肉体でこの世界に実在しているのか不思議ではあるが神の言っていた通り今主人公は存在していた。

放浪人が考えている問題はそこではないがもう一度サーナをジッとみた。


「おまえ、歳は?」

「今年で16よ。多分あんたとそこまで変わってないとおもうけど」


まじまじと放浪人の顔を見るサーナだが


「そっそうね!だいたいわたしと少し上位かしら!」


フイっと顔をそむけた。

その時のサーナの心境。やっぱりかっこいい!うう恥ずかしいという頭ピンク色


「16…そうか。まぁそう言われればそうだな」

「セイチョウするといいな」


胸で判断してはいけない!と鳥が鳴く。


「まっまぁ!わたしの学園20代までなら受験資格あるし、入学もできるはずよ

それにトップクラスの私が推薦すれば予備試験の合格率も上がるわよ」

「そーなのか。まぁ悪い話じゃなさそうだし入学検討してみるよ」


その名の通り今現在行く当てもない放浪人の返答にサーナは顔を赤らめ体をモジモジさせた。


「ももし、あああんたがそのなんていうか入学できたらその……が学園の案内とかさ。ゴニョニョ」

「なんだ。学園案内?」


聞き取りにくい言葉に放浪人が耳を傾けると


「ハイレーハイレーハイレー!入らんかバカ者!」


サーナの肩に乗っている鳥が再び怒号の如くなく!


「あーシショウ。耳元で鳴かないでよ」


サーナは耳を押さえながらシショウに訴えた。


「シショウ?こいつの名前か」

「ん?そうよ。かわいいでしょ」

「俺より名前らしい気がする」


不満な顔をする放浪人とこの鳥を飼う強い意志を見せる強い瞳するサーナ。


「というかしゃべったよなこの鳥……」

「シショウ!」

「シショウ…さっきから鳴き声と決して言い訳できない声を発してるぞ」

「きっと人の言葉を覚えることが出来るのよ。図鑑で見たことあるし」

「ハッキリしすぎな気がするが…」


異世界だから。とりあえずそう思うことにして「そうかい」と放浪人はシショウを飲み込んだ。

その時不意にサーナは何かを思い出した。


「そういえばあんたに聞きたいことあるんだけど」


そう言うと再びジャーバンドを操作し放浪人の前に画像を表示して見せつけた。


「この写真の人みたことある」


そこに映し出されていたのは画像には食堂らしき所と多くの人間に囲まれながらスプーンを口に加え楽しそうに笑顔を振りまきピースサインをしているショートカットの銀髪で活発そうな女の子の写真。

放浪人は写真を見るなりすぐさま首を横に振る。


「悪いがみたことない」

「そっか。記憶もないからしょうがないわよね」


サーナは残念そうにうなだれ画像を閉じた。


「もし見かけたら教えよ」

「覚えてたらな」

「それでいいわ」


どことなく残念そうな顔をするサーナの姿。なにか元気づけようと口を開きかけた放浪人だったが突然立ち止まり後ろを振り向いた。


「どうしたのよ。突然立ち止まって…まさかまた喉が渇いたとか……」


不満げな顔をするサーナの口元に放浪人は指を静かに添えると顎で後ろの方を指示した。


「何かくる」


すると少し遠い地面から微かな振動と揺れる砂ぼこり。それはすごい勢いで放浪人たちの方に向かってきていた。


「もしかして魔物?さっきの騒ぎで場所が分かったのかしら」

「魔物?」

「そうよ。他にも色々言い方あるけど……どこまで記憶がないのよ?それとも本当に馬鹿」

「うるさい」


小ばかにされムッとする放浪人の横でサーナは慌てることなく腕についているジャーバンドを操作しはじめた。


「ええと。この辺りだとこいつかしら」


ジャーバンドのモニターに表示された画像それはハサミの部分がドリルのように先が尖っており黒い背中が硬そうなサソリに似たヘンテコな生き物。ドリルはロマン


「ノウアルサソリってやつかしら、体は固くて鋭いドリル……それで貫かれたらひとたまりもなさそうね」

「殺意がむき出しで脳はなさそうだけどな」

「?何よそれ」

「いや気にするな」


何か言いたげな顔をするサーナだったが首を横に振り


「スワード」


先ほど暴漢たちに見せつけた氷の剣を作って見せると砂場に突き刺した。

氷でできた剣は砂の熱ですぐさま溶けてなくなった。

「これでよし。ちょっとこっち来てくれるここだと巻き込まれるわ」


というとサーナは放浪人のマントを引っ張りその場を移動した。


「一体何をしたんだ?」

「まぁ見てなさい」


放浪人の問いにも余裕そうな顔をして笑うサーナ。すると先ほど二人がいた場所から一気に砂ぼこりを高く上がった!舞い上がる砂埃から見える鋭いドリル!

その姿は先ほど画像で確認した。大きなサソリに似た生物だ!

ノウアルサソリは獲物を探すように辺りを見渡し放浪人とサーナを見つけると

狙いを定めるようにガチリと大きな二つのドリルのような手と曲がる尾の先にオプションのようについている鋭い針を突き付けた。


「どうやら狙いは俺達のようだ。下がってろ」


意気込んだ放浪人はサーナを庇うように手を前にやりノウアルサソリに歩いて行く

しかしサーナは余裕そうに髪を上げた。


「ほっといても大丈夫よ。もう仕込みは終わったから」

「仕込み?なんのことだ」

「こいういうこと」


サーナが人差し指をクイっと軽く上に上げた。

すると突然ノウアルサソリの体が物凄い早さで氷に侵されていった。

ノウアルサソリは焦りか奇声を上げながら氷を払いのけようと暴れるも氷は体から離れずむしろドンドン広がっていく!ノウアルサソリがやられる前に二人を殺そうと突っ込んできた!……だが時はすでに遅し

ドリルが二人の目の前で止まると同時に完全に氷漬けになった。

カチコチに氷漬けになった姿はこの砂漠には不釣り合いで異様な光景。

氷はとける様子もない。一滴のしずくさえこぼさない。クリスタルのようだ


「これ魔法か?」

「魔法と魔術の合わせ技よ。ほらさっき地面に剣を突き刺した時よ。

その時一緒に呪文を唱えたの。氷魔法と本の少し動きを抑える魔術。

すごいでしょ。まぁ魔術の方はほとんど役に立ってない気がするけど」


サーナはそう言うと凍ったノウアルサソリに恐れもせず近づくと氷に触れた。


「まだ生きてるわこれ。流石この砂漠で生きてるだけはあるわね……このまま氷を内部に追加して串刺しに」

「はぁぁぁ!とりゃあああ!」


放浪人はサソリの頭部に拳を打ち込んだ!

打ち込まれたところから氷にヒビが入りサソリの体ごと粉々に崩れて粉砕された。


「へー一撃で粉々に砕けるなんてやっぱりやるわね」


放浪人の一撃にサーナは感心した。

氷の粉が辺りにキラキラ反射しながら舞うと先ほどが嘘かと思うほど一瞬で解け蒸気あげ小さな虹になった。

ノウアルサソリは氷と共に砂漠の一部とかした。


「とりあえず討伐報酬ゲットね」


サーナはガッツポーズをとるとジャーバンドを操作し始めた。

「討伐報酬?」放浪人が首を傾けて訪ねると

サーナは不服の顔をする。


「当たり前でしょ。今回はわたしのほぼ手柄だし水も恵んであげたんだからいいっこなしよ」

「いや。それは別に構わないが討伐報酬って…」


聞こうとする放浪人より前にサーナは何かに築くと顔を上げ放浪人の後ろを指さした。


「あっあそこの小さく見えてるところ!」

「なんだ?」


サーナが指さした先。目を凝らしてやっと見ることができる砂漠の色合いに合わせたかのようなペールオレンジ色の建物が立ち並ぶ街並み。


「やっとちゃんとした砂漠の街についたわ!」


サーナの嬉しそうな表情を浮かべ街に向かって歩き出した。


「ほら、はやくいきましょ」

「まぁまだ時間はあるゆっくり知ればいいさ」


そうつぶやくと放浪人はサーナの後ろについていった。


放浪人達はついに町にたどり着く!はたしてこの町でどんな出会いがあるのか


「そういえばなんでシショウなんだ」

「え、あんた知らないのシショウってよく耳元で鳴いてるのよ」

「ずっと隣で歩いてるが聞いたことない」

「そうなの?よくフハハハハハって笑ってるみたいに鳴くのよ。まさに嗤笑だからシショウ」

「……そうか」


放浪人が耳を傾けると


「タワケガ!」


シショウが放浪人の耳をどついた。

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