幼馴染の高飛車お嬢様と付き合い始めたが、めちゃくちゃ可愛い。世界一可愛い。

赤月ヤモリ

第1話 告白

 俺、神田かんだ総一そういちには幼馴染が居る。


「おーほっほっほ! 総一が私に何の用なのかしら!」


 この目の前に立つ高飛車な金髪ドリル——天音あまね有栖ありすだ。


 子供の少ないこの村で、唯一の同い年の少女であり、地主の娘で箱入りのお嬢様。


 俺たちは物心つく前から仲が良くて、それは高校二年生になる現在でも変わらない。


 そんな有栖のことを俺は、子供の頃からずっと好きだった。


 そして高校生になり、俺は友達では満足出来なかったのだ。


 でも関係を壊すことが怖くて、告白する勇気なんて出なかった。


 しかし、それも今日で終わりだ。


 今日、俺は有栖に告白する。


 この高飛車で、どういう訳か俺の前でだけクソ生意気な幼馴染に、愛の告白をする。


 振られたら一生涯揶揄われるだろうが、関係ねぇ!


 もうこの気持ちを隠すことは出来ないのだ!


 放課後の学校の屋上。夕焼けが俺達を照らす中、俺は生つばを飲み込んでから、叫んだ。


「有栖、好きだ!」


 学校中に響き渡るぐらいに、声を張る。


「……ぇ?」


 ぽかんとした表情を浮かべる有栖。


 対して俺は滅茶苦茶頬が熱い。


 顔が赤くなっているのを自覚する。


 恥ずかしい。


 でも、こうなったらとことん思いをぶつけてやる。


「好きだ! どうしようもなくお前のことが好きだ! 昔からずっと愛してる!」


「え、えぇ!?」


「だから俺と付き合ってくれ!!」


 全部言い終えると有栖は目をぱちくりと見開き、俺を見る。


 そして、かぁっ……と真っ赤に頬を染めた。


「えぇええええええええええええ!?」


 俺に負けず劣らずの大声を上げ、一歩二歩と後退る有栖。


 いつもの高飛車な様子が吹き飛ぶくらい衝撃的だったのだろう。


 当然だ、俺達はずっと幼馴染で友達だったのだから。


「……だ、ダメか?」


 不安になり、上目遣いで尋ねる。

 すると。


「ぁ、ぁう……え、えっと、その……ハッ! お、おーほっほ! 総一ごときが私と付き合えると、本当に思っているのかしら!?」


「……」


「釣り合っていると思うのかしら!?」


 釣り合っているか、と言われれば釣り合っていない。


 有栖は学内でも有名な美少女であり、実家は金持ち。


 対して俺は幼馴染というだけのフツメンで、実家は農家。


 彼女の言う通り、俺ごときが付き合えるはずなかったのだ。


 ……嗚呼そうか、俺は振られたのか。


 こればっかりは仕方がない、か。


 これ以上食い下がっても惨めなだけだし、受け入れよう。


「…………わかっ」


「そ、そこまで言うのなら、付き合ってあげてもいいわ! えぇ、仕方ないわね! 仕方がないし、幼馴染だし、貴方といるのは、その、た、楽しいから、付き合ってあげてもいいわ!」


 ん? いきなりどうしたんだ?


「いや、無理にOKして貰わなくても……俺は気にしないからさ」


「な、何よ! 付き合うって言ってるでしょう!? それとも今更無しと言うのかしら!?」


「え、で、でも釣り合ってないんじゃ——」


「う、うぅ、五月蠅いわね! もう付き合ったの! 恋人なの! 結婚するの! 文句ある!?」


 鬼気迫る勢いで顔を寄せて来た有栖。

 俺はその気迫に押されて——。


「あ、ありません」


 ふるふると、首を横に振った。

 え、と言うか結婚するの?


 俺の返答を聞き、ぱぁ……っと笑顔になる有栖。

 彼女はそのまま俺の腕に抱き着いて来る。


「分かればいいのよ、分かれば。それじゃあ、これからお爺様にご報告に行くわよ!」


「……え?」


「これで孫の顔が見れるとお喜びになられるわ! おーっほっほっほっ!」


 え、ちょっと待って。

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