10/2(金) 日野 苺
「じゃ、凛々姉。改めてよろしくっす」
「んんっ。あの……みんな2日間お疲れさま。一人ひとりが頑張ってくれたおかげで、無事文化祭を終えることができた。最高の2日間だった。本当にありがとう……あたしは、あたしは、振り返るとこれは中学のときに……っ」
会長が言葉を詰まらせてしまったところに、七瀬ちゃんが前に割り込んだ。
「はいはーい、長い長い! んじゃ、かんぱーいっ!」
「「「かんぱーい!!」」」
「えっ!? あ、芦屋っ」
夜、あたしのバイト先で知実くんのおうちの「カフェリトルバード」は、文化祭実行委員を集めての打ち上げ貸し切りになっていた。
マスターとサチさんがドリンクと軽食を用意してくれたから、あたしと知実くん、音和ちゃんでサーブを手伝う。
みんなが笑っていて、学年も性別も関係なくお話ししていて、絵に描いたような青春の時間があった。
「みなさーん、カメラの前に集まってください」
宮下くんが自慢の一眼を、テーブルの上に置いて覗き込む。
「あ、前の左から二番目三番目重なってるんで。あとできれば全員、手を上げたり動きつけてくださいねー。うんうんリア充感出てきたーッ! あ、副会長は後ろじゃなくて会長の隣で!」
ピカピカとカメラのライトが点滅する。
「せーのっ」
「「「「ありがとう、虎蛇ぃーーー!!!!」」」」
宮下くんが勢い良く前に滑り込んだせいで体制が崩れて、中央でだんごみたいになってしまう虎蛇会メンバー。そして、周りを囲む笑顔の文化祭実行委員のみんな。
それはドラマだったら完全に最終回だなっていうまぶしい場面。
充実した日々。
あたしの欲しかった青春が、どんどん手に入ってる。
こんなにも順調すぎると、何か失うんじゃないかっていう怖さもあるけれど、でも、知実くんたちと一緒なら……。
少しくらい手放すものがあったとしても、些細なことだよね、きっと!
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