7/13(月) 葛西詩織④

 先輩の姿をいち早く見つけるため曲がり角を凝視するにあたり、下校する生徒を何人も見送った。時間だけが刻々とすぎていく。

 たまに音和からメッセが届き、ちょこちょこ返信をした。

 何度目かのやり取りで画面を見ているとき、やっと待望のお方の声が上がった。



「あっ、えっ!? どうして……」



 はいはい、お待ちしておりました。

 坂の下の曲がり角で、葛西先輩が俺と車を見て愕然としていた。



「虎蛇にいなかったので、ここまで来ちゃった。テヘ☆ それで先輩、お体はいかが?」

「……」



 先輩はばつの悪そうな顔をして目を逸らし、俺を素通りして運転席の横で立ち止まった。五百蔵も車から下り、葛西先輩の斜め後ろで日傘を開いた。



「あの、さ。今日、張り紙見たと思うけど、俺、順位表上位に名前載らなかった。ゴメン」



 ぺこりと頭を下げる。その間、ため息さえも聞こえてこない。

 顔を上げると、複雑そうな表情を浮かべる先輩と、その後ろで呆れ顔の五百蔵がワンセットで目に入った。



「……朝も言いましたけど、仕方のないことです」

「でも……」

「でも約束ですから。鹿之助に認められないと合宿には行けません。もう、いいですから……」

「俺、それでも頑張って……」

「分かってます。教えていた私が、いちばん分かってますよ! 悔しいけど、もうどうしようもないじゃないですか。これ以上困らせないでください」



 先輩が声を大きくするにつれて、いろんな後悔にかられて頭をかきむしりたくなる。



「少年。君は自分では頑張ったつもりかもしれないが、結果が出せなかったのなら意味などない。厳しいと思うかもしれないが、大人の世界では過程の努力は評価にならない。すべては結果で判断されるんだよ」



 五百蔵の言うことはもっともだ。やっぱり、なにも返す言葉がない。



「でもあんなに頑張ってたし、問題も解けてたのに。小鳥遊くん、結局あなたは何位で、何点取れたんですか?」



 先輩の目がどんどん潤んでいくのが分かった。

 申し訳ない。ふがいない。

 こんなにがっかりさせて、泣かせて。何やってんだ……。

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