第45話 大将軍と政務官

 僕たちは王様を殺してしまった事を相談する為にミリーシャ王国の冒険者ギルドに向かっていた。歩きながらそれぞれが重たい雰囲気だったし、奴隷達も自分達の家に帰り始めた。


 きっと奴隷達の家では親が泣いていたり、子供が泣いていたりという感動の対面があるのだろう。だけど僕にはそのような気分にはなれなかった。


 冒険者ギルドに入ると。

 中には冒険者ではない人がいっぱいいた。

 彼らはどうやら困り果てているみたいで、その中にはセバスデン大将軍とリンクル政務官がいた。セバスデンの両隣にはジルとデイの女性と男性の部下がいた。


 彼等はこちらを見ると全員が抜刀を始めた。


「おやめください、冒険者ギルドでは乱闘は禁止です」


「ここにいる皆に教えてあげて」


 そう呟いてくれたのは玲子であった。

 彼女はこれから何が起こるか分かっているような表情をしていた。

 さすがになるようになってしまえと思った僕はまるで罪の告白のように大きな声で叫んだ。


「僕は王族を皆殺しにしましたあああああ」


 最初はそこで罵詈雑言が浴びせられると思っていた。

 だが1人また1人と涙を流し、よしっとかやったとかなぜか喜びの声が聞こえてくる。


「一体どういう事なんですか?」


「そうじゃのう、お主らも立ってないでこちらへこい、受付嬢の嬢ちゃん椅子を頼む」

「はいですわ」


 受付嬢が僕と冥王と玄武と七つの大罪メンバーと勇者山中と玲子とボンバー魔王は玄武が現在あやしている。その後ろからは申し訳なさそうに破滅竜がやってくる。彼も今記憶が混雑していて歩きながら現状を確認している。



「まずは、色々と申し訳なかった。あれでもよい演技じゃったろう?」


 セバスデン大将軍はとんでもない事を言い出したのだ。


「そうなのです。それがし達は国王の一派に脅されていました。謀反でも起こせば家族を皆殺しにすると、そしてその家族は殆どが奴隷にされました。話によると働かされていたみたいです」


 その時僕は驚愕していた。

 つまりあの助けた奴隷達はこういう人達を配下にする為に人質にしていたという事になる。彼らを助けられたお陰でちょっと嬉しくなる。


「皆さんご安心を奴隷は解放しました」


 その場が歓声に包まれた。

 人々は涙を流して感動しているものまでいた。

 

「今頃あなた達の家に向かっていると思います」


 さらに男性騎士やら貴族みたいな人も鳴き声をあげる。

 どうやら王様は貴族でも例外なく人質を取っていたのだろう。


 

「国王様は死にたくなかったそうです。それで破滅竜なる伝説を掘るのだと。表向きは鉱山を掘っているとの事でした。さらには鉱山を掘っているという事すら隠して、奴隷自体も隠して、全てを演技で演じていたのです。本当に恐ろしい国王でしたのう」

「セバスデン様はとてもがんばりましたわ」

「セバスデン様はうっしたちの希望です」


「問題はこれからのこの国のありようじゃが、あまり変わらぬかもしれぬ、ただドーナツの名店が一杯あって平和なミリーシャ王国に、今度は演技ではなく本当になれるのだから」


「ごほん、あなた達が魔王を倒してくれた。さらには破滅竜まで倒してくれたおかげで少し問題が解決しました。しかしまだ解決していない所もあるのです。本当にこれから国を作るとは大変な事なのだと思います」


 さすがは政務官、とてつもなく長いセリフを話して見せる。


「では、この国は王様がいなくても成り立つと?」

「もちろんです。国はあれど王様いなくても成り立つものですよ、戦争があった時の為の予行演習が必要です。あなた達が命を賭けて戦ってくれたおかげで、人は無限大の可能性があるという事を思い知りました」


「そうですか、それはよかった」


 その時だったとてつもない大地震が巻き起こるような音が響いたのだ。


「だ、ダンジョンが出現したぞおおおお」

「おおおお、これで沢山の冒険者がくるぞおおおお」



 沢山の人々が大きな声で叫び声をあげている。

 それがダンジョンなら僕も探索してみたい、それが冒険者なのだから。


 どうやらセバスデン大将軍とリンクル政務官がいればこの国は成り立つのではないだろうか、それに新しいダンジョンが出現したという事もあり、経済面では困らないだろう。


 後は、120億という魔王の軍勢を倒した。

 本来ならば王様から貰うはずだった報酬、それを僕は殺す事で台無しにした。

 とはいえ殺さなくても褒美をもらえず洗脳されていただろう。


 そう言う事を受付嬢に説明すると。

 奥の方からギルドマスターが出て着た。

 ギルドマスターは体の大きい女性だった。

 顔は結構可愛いのだが、体が熊みたいであった。


「事情は聞いたよ、君達もこっち着なさい」



 これから食べらるのだろうかと、七つの大罪達は思っていそうな顔をしていた。


 まずは端っこに僕が座る。あれか逃がさない為か、次に七つの大罪の7名が座ると、冥王に玄武、勇者、玲子にボンバー魔王と幼竜。


「それにしてもすごいパーティメンバーだね、その赤ん坊にいたっては謎だね、謎の魔力を感じるよ、あとはこの幼竜も破滅的なオーラだね」


 そうです赤子も幼竜も破滅級にやばいやつです。


「さらに七つの大罪ねぇ、ルンデウスの街から来たとは聞いていたが、すごい美女ばかりだねぇ、どうだい男として最高じゃないか?」

「最高です」

「そうだろう、さて報酬の件だがここにいる全員に渡す。赤子と幼竜は除くがな」

「それで結構です」


「金貨10億枚 銀貨10億枚 銅貨10億枚 となるのじゃが」


 さすがにありえないとその時は思った。

 だがそれが現実だ。

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