第302話 命拾い


「あはははは!!!」


 大いに喜ぶ蓮見。


「俺様こそ最強だぁーーーーー」


 だが、ここで――。


「あつーい!!! このばかぁー!」


 美紀の声が聞こえ、


「きゃああああ!!! お姉さんの心だけでなく身体まで燃やさないでよー!」


 エリカの声が聞こえ、


「丸焼きになっちゃう……大事な胸が燃えちゃうーーー!」


 七瀬の声が聞こえ、


「火責め……身体が火照ってえっちな気分超えてこれはハード過ぎですぅぅぅ!!!」


 瑠香の声が聞こえてきた。


「……うん?」


 そう思い、視線を仲間の方へと向けた蓮見。


「……あっ」


 思わず、言葉を失ってしまった。

 まだ冗談を言う余裕はあるみたいだが――。


「……やっちゃった」


 全身に汗をかきはじめた蓮見。

 これは周囲の温度が熱いからではない。

 蓮見の視線の先では聖水を奮発して使い、さらに通常手榴弾による爆発規模拡大に伴い、七瀬が導きの盾を連発して使い作った一枚の巨大な盾(薄い緑色の盾の繋ぎ目)の隙間から炎が強引に侵入し四人の女の子に襲い掛かっていたのだ。


 視線を元に戻せばいつの間にか緑色の粒子が蛍の光みたいに沢山あり綺麗だ。だが視線を別の方向に向ければ可愛い女の子達が燃えている。


 ゴクリ。


 息を飲み込む蓮見。

 後先考えずにその場の勢いだけで豪快にいった。

 だけど火薬量や爆発範囲や爆発規模などといった事を一切考えていなかった為に今回は自分だけが無傷で仲間を巻き込んでしまった。唯一の救いは感覚的にあっちに被害が出たらとヤバいと思い、手榴弾や聖水をばら撒かなかった為に全員のHPゲージが半分程度の減少で済み、冗談半分で言ってくれていることだが……。


「こ、殺される……」


 手が……いや全身が異常に震える。

 それから地上に降りた蓮見は七瀬が作った導きの盾の隙間に勢いよく飛びこみ、スライディング土下座。


「み、皆様、この度は……も、申し訳ございません」


 意地もプライドもない光景に炎が晴れた時には、四人が鼻で笑った。


「そっかぁ。なら死ぬ覚悟できた?」


「い、いえ、里美様その槍をどうか……お、収めてください……お願いします」


 頭をあげ、許しを請う蓮見。


「私言ったわよね?」


「は、はい……。今度……我儘一つ何でも聞きますので……どうかご勘弁を……」


 ――ピクッ!?

 美紀の身体が一瞬反応する。


「なら……許す」

(なんでもか……なんでも……ならキスとかもいいのかな……)


 そう言って槍が収められるのを確認した蓮見は安堵のため息を一つ。

 何でもと聞いて頬のニヤニヤが止まらなくなった美紀を置いて、蓮見は先手を打ち続ける。


「エリカ様とミズナ様とルナ様の我儘も一つずつ何でも聞きますので……その……笑みの後ろにある物をしまってはいただけませんでしょうか?」


 もう一度頭を下げて命乞いをする蓮見。


「ま、まぁ、そこまで言うならお姉さんとしては……許すしかないかな……」


 チラッ、チラッと視線を向けては外すエリカ。


「別に私は怒ってないけど……まぁ紅が私の為に何かしてくれるなら……」


 あまり興味がなさそうにして呟く七瀬。

 だけど声は何かを期待しているようにも聞き取れなくもない。


「えへへ、本当ですか? なら私は紅さんに今度沢山甘えさせてもらいますね、えへへっ~楽しみだな~」


 とても素直に瑠香。

 と、なんだかんだ許しを貰う事ができた。


(あぶねぇ、今回はマジで死ぬかと思った。目だけは間違いなく本気だった……全員)


 冷や汗を腕で拭いながら立ち上がる蓮見。

 すると、燃え盛る木々の中から三人の人影が見えた。


「誰だろう……」


 一人は女の子もしくは子供だろうか……そう思う程に小さい人影とその後ろに二つの大きめの影。


 ゆらゆらと燃える火の中から三つの人影はゆっくりと近づいてくる。


「午前の部は私達の邪魔をし、午後の部では早速偵察隊を全滅とはやってくれましたね紅さん」


「あ、貴女は……」


 中々次の言葉がでない蓮見。


「葉子」


 耳打ちされた言葉を聞いて、


「葉子さん!」


 少し間こそあったが、なんとか言いたい事を言えた。


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