第270話 あれ? おかしいぞ!?!?!?!?
最初はなりたい職業決めからだ。
ここで今後の人生が決まる。
つまり順番決めと同じぐらいここは最重要ポイントとなる。
ここまでの流れは以下の通りである。
順番が一番のエリカは物理学者。二番の七瀬は看護師。三番の瑠香は地方公務員。四番の美紀は学校の先生。
皆そこそこに良い給料が貰えると好調なように見える。
まずは自分もこの流れに乗れるようにと思い、ルーレットを回す蓮見。
「ふむ。俺は五か」
蓮見は出た目の数に合わせて自分の駒を動かしていく。
その先でなった職業とは――。
「ぎ、ギャンブラー、だと!!!!????」
驚きの声が部屋に響き渡った。
ギャンブラーは収入ゼロもあれば一攫千金もある。ただしお金を得れる確率の方が低い職業である。今回蓮見達がしている人生ゲームは一回までなら職業を選び直すことができるのだが、蓮見は敢えてこのまま行くことにした。
一番安定こそはしないが運さえ良ければこれなら一位を取り行くことだってできる。
そう考えると悪くはないかもしれないと考えたのだ。
「奇声あげる程驚いてたけど、蓮見君どうする?」
「大丈夫です。俺はこのまま行きます! のでエリカさん次どうぞ」
「そう、なら皆一巡目が終わった事だし、次は私ね」
そう言ってチラッと蓮見を二度見してから自分の駒を動かしていくエリカ。
その間に蓮見はゴールまでのマスを見て、一発逆転が狙いそうな場所を予め把握していく。その表情は真剣そのもの。男には負けられない戦いがある、それが今だと思い勝負していく。そもそもこうなる理由はただ一つ。ボードゲームが強いエリカはともかくこのメンバーの中では弱い部類の蓮見では罰ゲームを喰らうと何を命令されるかがわかったもんではないのだ。特に今はさっきのキリンでの一件(爆燃)での女の子の怒りを買ったばかりだ。そんな後では何を言われるかが見当もつかないのだ。だからこそ、ここは男の名誉の為にも女の子相手に負けるわけにはいかないのだ。
それから始まる二巡目。
エリカ、七瀬、瑠香、美紀、蓮見の順番でルーレットを回していく。
まずエリカ。
鼻歌を歌い早くも余裕の表情を見せている。
その光景から蓮見は内心思ってしまった。
エリカには今回も勝てそうにないと。
「やったー! 出目は五ね。ってことで、いちー、にぃー、さんー、しー、ごぉ!!!」
早くも臨時収入マスに止まる。
初めの所持金は全員一千万からのスタートなのだが、ここではエリカがもう一度ルーレットを回して出た出目によって他プレイヤーからお金を貰う事が出来る。
――カラッ、カラッ、カラッ
「おっ! 四ね。その数×二十万だから皆八十万私にご祝儀しなさい」
そう言ってゲームの中と変わらない満面の笑みになるエリカ。
どうやらエリカはゲームはゲームでもお金が絡むとかなり強敵になるらしい。
続いて七瀬。
七瀬は七瀬でまだ余裕の笑みを浮かべている。
そうしてルーレットを回して止まったマスは婚活パーティーに参加。
そこでルーレットを回して止まった出目に応じて恋人が出来るらしい。
――カラッ、カラッ、カラッ
「おぉー! 六!」
「凄い、お姉ちゃん! 某企業の若手社長さんと付き合えるなんて!!」
「そうでしょ、そうでしょ!」
ガッツポーズをする程嬉しいのか、その顔はエリカにも負けない満足顔だった。
そんな七瀬を見て、「よぉ~し! 私も続くぞ~!」と気合いを入れる瑠香。
すると、ルーレットを回して出た出目が七瀬と同じ六で瑠香にまで恋人ができる事になってしまう。
「うそっ!?」
「えへへ~、どうですか、蓮見さん」
「……羨ましい」
「そうですか~、まぁ、これも運ですよ」
「くそぉ~~~~」
歯を噛みしめ悔しがる蓮見。
それから瑠香がルーレットを回すと、若手医師とこれまた玉の輿のチャンスしかなさそうなお相手が恋人と蓮見にとっては状況が悪くなる一方。
「なら次は私ね、えいっ!」
次は美紀。
ルーレットを回して出た出目は三。
「やったぁ~、期待の新人として会社の上司(校長先生)に褒められる。臨時収入ゲット、六十万!」
「なに!? 美紀まで!?」
「そうよ~」
「くそぉ~、こうなったら俺も皆に続くぜ!」
――カラッ、カラッ、カラッ
一人だけ出遅れるわけにはいかない。
そう思い、力いっぱいにルーレットを回して後は心の中で祈る蓮見。
「頼むぜ、ルーレット」
念を押すように呟き、数字の回転が遅くなり止まるのを見守る。
さてどうなる。
五人の男女が見守る中、ルーレットは徐々に回る速度を落としていく。
――!?
全員の目が見開れたその先の数字。
そこへと蓮見が自分の駒を動かしていく。
「いち、にっ、さん、しぃ、五!!!」
止まったマスの効果は偶数奇数を当てる。
内容としては以下の通りである。
もう一度ルーレットを回して予想が当たった場合は出た目の数×百万、外れた場合は参加者全員に出た目の数×二十万払う、と書かれている。
まさにギャンブラー。
「ここで俺が選ぶは偶数だな!」
「なら私達は奇数だったらお金が貰えるのね」
「ふふっ、美紀よ」
「なに?」
「俺の強運を舐めるなよ?」
「うっ……確かにそれはありそう」
「俺はこの右手に全てを賭ける!」
どこから来るのかわからない自信を胸に蓮見がルーレットを回す。
だか――。
「……一だと!?」
蓮見の表情が無へと変わる。
「一ね」
「一ですね」
「う~ん、これは一……以外にあり得ませんね」
「一で間違いないわね」
そしてエリカ達が各々の顔を見て針が示す数字が一で間違いない事を確認し合った。
それから悪い顔になったエリカは蓮見の懐から二十万を奪い、それに続くようにしてまだ現実が受け入れられておらず、一人が時が止まったように放心する蓮見の懐から同じように二十万貰った。
「これが現実よ」
「……ぐぬぅぅぅ」
早くも負の連鎖に入り始めた蓮見は奥歯を噛みしめた。
蓮見は悪い運気をここで断ち切る為に、自分の頬っぺたを叩いて気合いを入れ直す。
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