第二十四章 神眼とプレイヤーキラー
第267話 次のステージ準備と序章の始まり
「……キリンを倒したのか?」
蓮見達がログアウトした頃、ギルド内は騒然とし、盛り上がっていた。
ポツンと呟かれた声にルフランが鼻で笑う。
「みたいだな」
「……の割には落ち着いているように見えるが?」
「そうでもないさ。【神眼の神災】と呼ばれるにはそれなりの理由があるって事だ。もし【神眼の神災】の首を取りに行くなら気を付けろよ。アイツの首は俺の首より取りに行くのは厄介かもしれん。近いうちにまた会えるのを楽しみにしているよ、ラクス」
身体を反転させ手を振り、ギルドメンバーと一緒に何処かへ行くルフランをラクスは静かに見送った。
その手には僅かにだが汗をかいており、さっき見た光景が脳裏に焼き付いて今も鳥肌が立っていた。
まさかプレイヤーキラーの一点において初心者の無鉄砲が偶然今まで当たっていただけだと思っていたが今日見てわかった。
あれはじゃじゃ馬であり、決して偶然の産物ではないと。
ただ一つ疑問に思う事もあった。
偶然の産物ではないなら実力なのか? と言う事だ。
ルフランから注目される程、本当に強い理由が今だにわからない。
あの日見た二人の戦いでも、ルフラン相手に運が良かったんだなと蓮見を評価したラクスにとってはそれは不可解な事でしかない。
「おい、一つ聞いていいか?」
ラクスは視線を近くにいた男に向け問う。
「どうした?」
「その【神眼の神災】とやらは本当に強いのか?」
「正式な黒星ゼロでルフランと綾香が最も警戒する初心者プレイヤーにして世界で大人気者で異形の強さを持つ者ってのが簡潔な評価だよ。だけど実際はそれだけじゃない。誰もが思いにもよらない天災を笑って起こす、それを見てるとなんだか見てて飽きないし面白くてなんだかんだ強いって奴かな、俺個人としてはな」
「なるほど」
ラクスは「どうも」とお礼を言ってギルドを出て行く。
そして【神眼の神災】が先程起こした爆燃について熱く語っているのを見て思う。
まだ気づかないのかと。
美紀と七瀬の枷が無ければあの男はまだまだ暴れる事になるだろうと。
それと同時に美紀と七瀬の枷こそ【神眼の神災】。
とは言ってもこれに深い意味はない。
ただなんて言うか、ラクス個人にはそう見えただけ。
恐らく【神眼の神災】のピンチにはあの二人は誰に対しても牙を向く、今日のライブ映像を見てそう思った。
だからこそちょっとだけ思い出してしまった。
血の中に眠る、本能。
今までは同じ相手としか闘って満足するしかなかったDNA。
でないと殆どの者はラクスの準備運動相手になる前に倒れることになってしまうからだ。
だけど今日のライブ映像を見て確信した。
気付いたら手汗をかいていたほどに自分の想像を超えていた存在がまさか近くにいたと。
「面白い。私も近々相手してもらおうかな……うふふ」
独り言をつぶやくラクス。
その表情は柔らかい。
久しぶりに骨のある相手に出会えたと思うと、トッププレイヤーの本能とも呼べるべき戦闘の血がどうしても疼いてしまう。
王道を飛び越えたその先で掴んだ別の力。
その力に自分の力が何処まで通用するのか試してみたくなったのだ。
それからラクスは本来は必要最低限の板しか見ない提示板に目を通す事にした。
まずは情報収集からだ。
【神眼の神災】の異名を持つ蓮見はこの日を持ってラクスからも目を付けられる事になる。それからすぐにゲーム内では密かに囁かれる事になる。
最恐 VS 最強
の次は
プレイヤーKill VS プレイヤーキラー
の戦いになるかもしれないと。
後に大半のプレイヤーはこう思うようになった。
やっぱり見てて飽きないよな【神眼の神災】。
今度は何をしてくれるのか?
そんな期待を密かに胸に秘めて、本日の【神眼の神災】が起こした爆燃事件はすぐに別の話題に塗りつぶされ始める。
だが忘れてはいけない。
【深紅の美】ギルドは今誰を中心に勢力拡大中なのかを。そしてあの中で最も警戒しなければならないのは誰なのかを見間違えてはいけない。もっと言えばその神災を制御する者と暴走させる者の両方が近くにいる事を絶対に忘れてはいけない。
賢者はそのことを正しく認識し、愚者は間違った認識をする。
そんな事がある板で呟かれ始めたのだった。
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