第221話 最恐VS最強 試合 余韻


 二人が控室へと行った。

 その頃観客席では――。


「「「「「オォォォォォォォォォォ!!!」」」」」


 大地が震えるのではないかと思えるような歓声に包まれていた。


「やっぱりルフランさん最強説じゃねぇかぁ!!!」


「いやいや、紅さんもあれやべぇって!!!」


「そうだぜ、弓使いであれはヤバイ。なにあれ。もうとりあえず弓使いって感じしかしねぇもん!」


「でもやっぱりルフランさんはイケメンなだけでなく強いことがわかったな! なにより聖剣エクスカリバーは格好良過ぎる!!!」


「わ、私はルフランさんも凄いと思うけど、紅さんも凄いと思うわ!」


「なんで?」


「だって剣専用スキルまで簡単に扱うのよ。それにルフランさんのHPゲージが初めて赤色になるまで追い込んだのよ。今まで誰も成し遂げれなかった前代未聞の快挙を成し遂げたじゃない!」


「た、確かに。ってかあの人達、二人共ヤバすぎ。見ているこっちが鳥肌が立って途中武者震いしちまったぜぇ!」


「それな! いやーあんなの見せられたら今日ここ来て良かったなーって思えるよな!」


「てか俺初めて見たぞ!」


「なにをだ?」


「戦いながら歌ってMP回復する人をだよ! ただの噂かと思っていたが、マジか!? ってつい思っちまった!」


「あーあれな。あの人は自由人でありながら最恐の称号を持ち神の代行者とまで最近では言われているお方だからな」


「「「「「おぉーすげぇー」」」」」


 とあちらこちら二人を称える声が聞こえてくる。

 そして共通して言えるのが、皆最恐【神眼の神災】と最強【ルフラン】に影響を受けているということだ。


「紅さん負けちゃいましたね……」


 落ち込む瑠香。


「「「………………」」」


「あれ……?」


 返事がないなと疑問に思い両サイドにいる美紀達を見ると口をポカーンと開けているではないか。


「ん?」


 一瞬何事かと思った瑠香だったが、すぐに理由がわかった。


 三人共想像以上の激戦に言葉を失っているのだと。


 そして偶然にも近くで二人の試合を見ていた綾香とソフィの会話が瑠香の耳に入って来た。


「どう見る?」


「ルフランはやっぱり尋常じゃないかな。なにより最強が似合う男だと思ったよ」


「神眼は?」


「そうだね。やっぱり予測不能で最高! 私も近いうちに再戦申し込もうかな。イベントでの対戦でもいいけど」


「嬉しそうだな」


「まぁね。だってルフランの隠し玉を見れたからね。そしてそれを使いこなす紅、もう笑うしかないでしょ。それに多分だけど……」


「どうした?」


「私の時と同じで隠し玉まだ持っている気がするんだよね……あの感じ。根拠はない。だけど控室に戻るときの紅一瞬ニコッと笑ったんだよね。つまり――」


「まだ進化すると?」


「そうゆうこと。ってことで今日この後私とガチの一騎打ちしない?」


「そうだな。私達ももっと強くならなければな。次こそ第三回イベントのお返しをする為にもな」


「なら決まり。とりあえずここ出て手ごろな所で勝負ってことで」


「あぁ、わかった」


 そう言って二人が席を立ち何処かへと言ってしまう。

 瑠香は嬉しかった。

 自分の好きな人がここまで周りに認められるだけでなく、他者にいい影響を与えていることが。

 そして瑠香もまた心の中で思う。

 負けてられないと。

 あんな心が躍る白熱した戦いをもっとしたい、そう思い、ボッーとする七瀬の腕を掴み言う。


「ほらお姉ちゃん行くよ!」


「えっ? ど、どこに!?」


「フィールド! 私もっと強くなりたいから!」


 そう言って戸惑う七瀬の腕を引っ張り強引に闘技場を出てフィールドに付き合ってもらう瑠香。


「絶対に追い抜かれないようにしてやる。それからもっと強くなってやるんだから!」


 瑠香の前向きな姿勢と言葉を見て聞いた七瀬は微笑む。


 妹もまた自分と同じ事を思っているのだと。


「もう、ルナは強引ね」


「うん! だって好きな人の隣にいたいから!」


 頬を染めて言う瑠香に七瀬は「そっかぁ」と言って後をついて行く。

 そして心の中で。


 ――ゴメンね。お姉ちゃん恋の応援はできないよ。だって私も好きだからさ


 と謝った。



 二人がフィールドに向かい始めた頃ようやく美紀とエリカの意識が戻り始める。


「す、すごい戦いだった……」


「そうね……。最後鳥肌立っちゃった」


「わ、私も……」


「紅君やっぱりいざって時カッコイイよね?」


「うん……私ドキドキしているかも過去最高に」


「私も……今から一緒に会いに行かない?」


「いいけど、今から?」


「うん。何か今すぐ会いたい気持ちとドキドキし過ぎて一人じゃ恥ずかしい気持ちがね……。だから上手く励ましてあげれないかもって」


「わかった。なら一緒に行きましょ」


「えぇ」


 美紀とエリカは自分の恋心と向き合いながら控室にいるであろう蓮見の元へと向かう。


 ――もう膨れ上がるこの気持ちに我慢できないよ……告白しようかな……


 と二人は密かに心の中で思っていた。


 そのドキドキは恋心だけのドキドキなのか、試合を見た高揚感から来るドキドキなのか、それともその両方のドキドキなのか二人はこの時正しく認識できていなかった。ただ言えるのは二人共これは恋心が原因で蓮見がカッコよく見えたから仕方がないと思っていたことだ。


 だけど第三層で起こりゆる悪夢はまだまだ始まったばかりだとここでは述べておこう。


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