第213話 水爆実験 2
「あれって……」
「雷撃の閃光みたいだけど」
「なぁ里美?」
「なに?」
「ここってプレイヤーKillありだよな?」
「えぇ、戦闘フィールドにおいては不意打ち含め有よ。むしろプレイヤーKillの方がそこら辺の雑魚モンスター倒すより経験値効率良いから皆結構してると思うけど」
美紀が小首を傾げながら答える。
なにを今さらそんな当たり前の事を聞いてくるのだろうかと疑問に思ったからだ。
そんな美紀をよそに蓮見がニヤリと笑みを溢す。
「なら行くぜ! スキル『水振の陣』『罰と救済』『虚像の発火』!」
水振の陣(すいしんのじん)――効果:対象の矢一本に水属性ダメージ+二十ならびに敵に触れると水属性の爆発ダメージを与える。ダメージはSTR&INTに依存。使用回数:一日三回。
金色の魔法陣が前方に出現する。そこに重なるようにして水色の魔法陣が出現する。
それは中心部にかけて神々しく金色に光輝き、魔法陣の淵にかけて水色に光り輝きと少し違和感を覚える魔法陣だった。魔法陣の淵には魔術語で書かれた金色と水色の文字が浮かんでいる。
「す、すごい。こんな事出来たんだ……」
思わず驚く美紀。
「うわー、綺麗ねー」
神秘的な何かを見たように呟くエリカ。
「魔法陣って同時に使えたんだ」
新しい新発見に言葉を失いかける七瀬。
「相変わらずなんでそんな事思いつくんだろう……凄すぎる」
魔法陣の重ね掛けと言うある意味常識外れのことを平然とする蓮見を前に感動する瑠香。
そして自分達が遠方から狙われていると気づいた雷撃の閃光ギルドメンバーがこちらに向かって集団でやって来る。
「【神眼の神災】がいたぞー! 潰せ!!!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!」」」」」
突然の事に全員が身構えようとするが、
「俺に任せてください!」
と言う蓮見にとりあえず任せることにする。
「ミズナさん!」
「な、なに?」
「先に言っておきたい事があります!」
「もしかしてこの状況で愛の告白?」
「はい! もし巻き込んだらごめんなさい」
蓮見の口から不吉な言葉が放たれた。
そして不吉しかない矢も放たれた。
「その告白は要らない!」
「ミズナ!!!」
美紀の声が敵味方関係なく全員の耳に聞こえる。
「スキル『導きの盾』!」
薄い緑色の盾が出現し、七瀬、瑠香を護る。それから慌てて二人の後ろにやって来た美紀とエリカも護る。直径五メートルの円形の盾一枚では不安なので念の為に二重にして発動する七瀬。
そして次の瞬間。
「粉砕! 爆才! 大神災!!!」
と蓮見が叫んだ。そして間髪入れずに大爆発が前方で起きた。
――ドガーン!!!
火と水が混ざり合い同時に爆発したことにより、熱風が出現しその熱風が息をするだけで肺を破壊するのではないかと思われる熱い蒸気生み出し辺り一面を覆いつくす。流石の雷撃の閃光ギルドメンバーと言えこれには大ダメージを受けていた。一撃死しなかっただけ流石と言える。ただし、熱い水蒸気のせいで辺り一面の視界が悪くなり、息をするたびに熱い蒸気が肺に入り苦しそうだ。それを見た【神眼の神災】は得意の遠距離つまりは水蒸気が覆いつくす危険区域外から矢を十本程放ち生き残った全員の命をその場で刈り取りはじめた。
「あ、悪魔だ……これは例えるなら一方的な蹂躙……」
「神じゃなくてもう悪魔ね」
「今度は悪魔かー。神様も大変……」
「神と悪魔……このゲームのラスボス紅さんでいい気がする……」
正に水蒸気爆発と言わんばかりにドヤ顔で美紀、エリカ、七瀬、瑠香の方を振り向く蓮見。だけど全員苦笑いしかしてくれなかった。
「あれ? 今回はいけると思ったのに……」
それから「う~ん。まだ改良の余地あり?」と一人納得のいく反応が仲間から得られなかった蓮見が腕を組んで再考を始める。
ここでもう一つの新スキルをお披露目してもいいのだが、もしそれまで見せると失敗した時の保険がなくなるのでここはなんとか現状のスキルだけでこの状況の打開策を考える蓮見。
「十人か……。広範囲攻撃で火と毒の耐性を持つ相手にコレとは……」
「そうね。ソフィと綾香がいないとは言えこれは一方的ね」
「ちなみに威力的は申し分ないとして見た目以上の派手さはないけどミズナの感想は?」
「ザっと今の一撃で半径三十メートル前後が息苦しいエリアになった。攻撃を躱してもその影響範囲内からすぐに出ないと息ができない。これは厄介としか言いようがないかな」
「だよね。仮に息を止めて脱出を試みても無酸素運動は体力消費に繋がる。これを連続で使われたら正直悪魔の所業よね」
「ホントね。これに『爆焔:chaos fire rain』を合わせたら単純にこの十倍。間違いなく私達も巻き沿い喰らうわね。てか下手したらKillの惨劇もあり得るのか……」
「そうよ。だから使う時はミズナの判断でお願いね」
「……えぇ」
美紀と七瀬はこの状況を冷静に分析していた。
この男――蓮見の成長はやはり何かが可笑しい。そう思わずにはいられなかった。どうして毎回このような必殺級の何かを意図も簡単に見つけてくるのかと。これは運営と蓮見しかまだ知らないが水振の陣は三層の混浴露天風呂を全て制覇した者かつそこにある特殊クエストをクリアする必要がある、つまりは温泉マニアしか見つけれない超マニアックスキル。当然蓮見はそこまで温泉が好きではない。ただ女の子のお尻、もっと言えば裸体を求めて旅をしていただけなのだ。
瑠香とエリカはお互いの顔を見て、
「やっぱり私達とはやる事の規格が違うわね……」
「ですねー」
と半分以上言葉を失っていた。
さらに偶然近くの岩陰で休んでいたルフランがそれを目撃していた事をこの時誰も気づいていなかった。獲物を見つけた目でニヤリと遠くから微笑んだ者は言う。
「ほぉー。俺を追って来た連中をまさか一撃で全員止めるとはな。そこから身動きを封じての一撃死。なによりそこに麻痺を使わない。つまり物理的にアレを放たれると息を止めて効果範囲外に出るしかないわけだが……。躱しても鬼、喰らえば強制テクニカルヒットで悪夢と言った所か……」
ルフランは警戒した。
遠距離攻撃こそやはり【神眼の神災】の強みだと思ったからだ。それに不規則に息を何度も止めると身体の酸素の循環が悪くなり長時間戦えなくなる。その事からやはり一筋縄ではいかぬ相手だと判断する。
「やはりアイツは最恐が似合う男だったと言うわけか。さてと綾香とソフィに釘を刺してこの俺が仕留めに行くとするか【神眼の神災】。お前の切り札しかと見たぞ」
ルフランは休憩を止めて歩き始めた。
その頃、蓮見は美紀と七瀬からくれぐれもむやみに今の新技は使うなと念を押されていた。エリカと瑠香はそんな蓮見を静かに遠目で見守った。だって蓮見の気持ちも、美紀と七瀬の気持ちも痛い程わかるから。
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