第92話 成長途中
一方蓮見がエリカに甘やかされている頃。
綾香は【雷撃の閃光】のギルド長ソフィと話していた。
二人の周りには沢山のギルドメンバーが取り囲むようにして待機している。
綾香はこの第三回イベントは【雷撃の閃光】から勧誘を受けており、一時的に所属する形となっていた。
「とりあえずギルド対抗イベントだけど……第一回イベント一位のルフラン率いる【ラグナロク】と神眼の天災が率いる【深紅の美】が一番警戒しないといけないギルドなのは間違いないわね」
ソフィは自分達が正面から戦って負ける可能性があるギルドとしてこの二つを最警戒していた。
「そうだね。私的には情報が多いルフランより情報が多いけど全部曖昧な紅の方が特に危険だと思う」
綾香は紅を特に警戒していた。
今日の手合わせで何かわかるかもと思ったが、分かったのはそんなに大したことのない情報だけだった。むしろ、手合わせをしたせいで、逆によくわからなくなっていた。蓮見の言う奥の手が綾香を倒す事が出来るものの可能性もゼロではない。
むしろその可能性しかないものを蓮見は持っている気しかしなかった。
その事を知っているのは【深紅の美】ギルドメンバーだけである。
「数で勝負すればこちらが不利になる事はないと思う。メンバーはたったの四人。どう見ても数ではこちらが圧倒的に有利なんだし」
ソフィは数で攻める事を綾香に提案する。
事実100人以上在籍する大型ギルドは数える程しかいない。
そこで物量による攻撃は【深紅の美】ギルド以外にも有効だと考えていた。
「数ねぇ~」
綾香はどうやらあまり気が乗らない感じで答える。
「【神眼の天災】は火と毒を使います。その耐性をしっかりと全員に付与出来れば問題ないのでは?」
【雷撃の閃光】の副ギルド長が二人に提案する。
事実、蓮見対策は多くのギルドで実行されている事から間違いではない。
今までの傾向からも山火事と毒が蓮見の強さの象徴ともなっているのでそのアドバンテージを潰すのは定石である。
「確かにね。後は遠距離攻撃……特にKillとテクニカルに気を付ければ実際何とかなりそうね。事実【神眼の天災】はあの里美がいてこそ強いと言うイメージが正直あるし。単体ではさっき言った事を気を付ければ問題ないわね」
「本当にそれだけで紅を止められるとは私は思わないけど……まぁギルド長がそう言うならそう言う事でいいと思うよ」
綾香はため息交じりに呟く。
そう本当にそれだけで倒せるなら何故今まで他のプレイヤーは誰も蓮見を倒せなかったのか? それが疑問でしかなかった。
確かに発想力は高い。だが里美と七瀬、更には生産職ではトップクラスの腕を持つエリカまでもが認めた人物。そんなに簡単に攻略できるとは思えなかった。
「どうゆう意味?」
「紅が最後私に言ったの。まだ奥の手が二つあるって。どうも引っかかるのよね」
「なるほど。なら貴方達悪いけど偵察隊を編成して【ラグナロク】と【深紅の美】ギルドそれぞれの情報を集めて頂戴。それと他の有力ギルドもお願い」
ソフィの指示に副ギルド長が返事をし、一斉に副ギルド長の指示の元全員が行動を開始する。
ここにいる多くの者は蓮見対策は毒と発火、そしてKillヒットとテクニカルヒットを何とかすればいいと思っている。
それはこれから数日で蓮見が成長しない事を前提に考えているからだ。
なので『猛毒の捌き』については知らないし、これ以上は進化しないと思っている。
だが、綾香はそうじゃないと何となく直感で感じ取っていた。
私をいつもワクワクさせてくれる者は常に成長しているのだと。
そしてそれはまだまだ成長途中でしかないことに気付いていた。
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