第74話 第二ラウンドと悲鳴
美紀が立ち上がり槍を構える。
七瀬も美紀の後ろで杖を構える。
そして、ボス戦は後半戦突入する。
「仕方がないわね。なら私も本気で行くわ」
美紀が一度深呼吸をして、目を閉じる。
集中力を限界まで高めてから閉じていた目を開ける。
ボスだけでなく美紀の雰囲気も変わった。
そして美紀が槍を構え突撃する。
ボスは美紀の突撃の突きによる鋭い一突きを持っていた槍を使い、槍の側面を弾く事で躱す。そしてもう一本の槍で美紀の顔を目掛けて攻撃してくるが、美紀が後方に向かってバク転をしてそれを躱す。
「スキル『連撃の舞』!」
「スキル『水手裏剣』!」
美紀の攻撃に合わせて七瀬が魔法によるスキルで援護する。美紀の連撃に合わせてその両サイドから回り込むようにして水手裏剣がボスを襲う。そしてダメージを与える。
「里美戻って! スキル『焔:炎帝の怒り』!」
七瀬の後方に出現した赤い魔法陣が赤く光始めると、ボスの身体を一直線に目掛けて、周囲の空気を圧縮し放たれたかのように勢いよく燃え盛る炎が飛んでいく。ボスは二本の槍を前に構え防御姿勢を取り障壁を展開する。
――次の瞬間。
大爆発が起きた。
爆風と爆炎が二人の動きと視界を悪くする。
「あれを防ぐとは……でも障壁は壊れた……」
美紀は視界が回復する前にボスに向かって走り始める。
わずかに見えるその姿を美紀は見逃さなかった。
「スキル『サンダーブレイク』!」
七瀬の追撃となる雷がボスを襲う。
ボスの意識が雷に集中したタイミングで美紀が爆発で起きた煙から姿を見せ攻撃する。
「スキル『連撃』!」
美紀の槍がボスの身体を貫いていき、ボスの槍が美紀の身体を同じく貫いていく。
同じスキルによる反撃。
だが、同じスキルでもPS(プレイヤースキル)による差がある。
美紀は直撃を回避する為、攻撃途中で身体を捻りダメージコントロールをする。
ボスは慌てて、もう片方の槍を七瀬に向かって投げるが美紀は無視した。
「スキル『導きの盾』!」
薄い緑色の盾が七瀬の前に出現し、槍の攻撃から身を護る。
「スキル『水手裏剣』!」
「スキル『ライトニング』!」
通常攻撃と七瀬の援護に加え、スキルによるダメージを与える。
そしてようやくボスのHPが三割まで減った。
その瞬間。
ボスの背中から更に腕が二本生え、槍が複製される。
そのまま手数が増えたボスが美紀に容赦ない攻撃をする。四方向からの怒涛の攻撃の前に美紀は手数が追いつかずダメージを受ける。そして最後の攻撃で壁まで吹き飛ばされた。
「スキル『焔:炎帝の怒り』!」
「スキル『恵みの光』!』
七瀬は炎による攻撃を囮としてボスが動きを止めて四本の防御姿勢を取ったタイミングで美紀の所まで行き回復魔法を使う。美紀の失われたHPが八割まで回復する。
「大丈夫?」
「ありがとう。こうなったらこちらも奥の手を見せてあげるわ」
そのまま立ち上がる美紀。
その表情はダメージによる痛みで苦しそうだった。
だが、美紀は笑っていた。
まだ、負けたわけでない。
「ミズナ、私の後ろにいて」
何も言わずコクりと頷いた七瀬が美紀の後ろに移動する。
「スキル【アクセル】!」
美紀の身体全体が白いエフェクトで包まれる。
そして次の瞬間……。
消える。
七瀬だけでなくボスまでもが急に動きが速くなった美紀に驚く。
相手の手数が倍になったのならこちらも倍の速度で動けば何も問題はなかった。
AGIを20秒間2倍にする、美紀の新しい切り札だ。
美紀は第二回イベント終わりでこのスキルを手に入れていた。
美紀のスキルに頼らない純粋なPS(プレイヤースキル)のみによる連続攻撃にボスのHPゲージが削られていく。だが、それは美紀も同じ。美紀とボスのHPゲージがお互いに一割程度まで減ったタイミングで両者が後方にジャンプをして距離を取る。
美紀は次の一手の為に。
ボスは態勢を整える為に。
両者が考える事は違った。
だが取った行動は同じ。
それが勝敗を分ける事になる。
「スキル『パワーアタック』……」
美紀の身体から白いエフェクトが消え小さい声で呟く。
「スキル『破滅のボルグ』!」
美紀の槍が黒味のかかった暗くも白いエフェクトを放ち投げられる。槍は一直線にボスに向かって飛んでいき、ボスが作った障壁と衝突する。美紀の槍は障壁を徐々に削り始める。
「今回は私一人じゃないけど、全力を注いで大丈夫なの?」
美紀の言葉にボスの身体がピクリと反応した瞬間頭上から雷が落ちてくる。
雷によるダメージで意識が障壁が離れると同時に今度は弱体化した障壁を貫通しボスの身体を貫いた。
直後、ボスの目の赤い光が消え、悲鳴をあげる。
ボスはそのまま光の粒子となって消えていった。
「……ふぅ。やっぱボスは強いわね」
「そうね。それより里美お疲れ様!」
モミモミ。
モミモミモミモミモミ。
モミモミモミモミモミモミモミモミモミモミ。
直後、女二人だけとなったボス部屋に可愛らしい女の子の悲鳴が響いた。
「キャァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
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