第六章 美紀の暴走
第56話 今夜の夜ご飯は美紀と一緒
――イベントが終わって。
あれからログアウトした蓮見はそのままベッドの上で今は寝転んでゴロゴロしている。
流石に勉強と言う気持ちにはならなかったので宿題は明日美紀に教えてもらいながらすることにした。
「それにしても疲れた……」
そう言って蓮見は目を閉じた。
目を閉じると、そのまま睡魔に襲われ意識が暗転する。
「ふはぁぁ~。よく寝た……」
次に目を開けると、太陽が沈み、窓から月明かりが差し込んでいる事に気付く。
大きく背伸びをしてから起き上がる。
「お腹空いたし、リビングに行くか……」
部屋を出て階段を降りると、音が聞こえてきた。
どうやら料理を作っているようだ。
「あっ、母さん今日の夜ご飯なに?」
「お母さんじゃないけど、今日は野菜炒めとお味噌汁とご飯。後はカレイの唐揚げ」
「…………えっ?」
寝ぼけているのだろうか。
蓮見がリビングに行くと、当たり前のように料理をしている美紀がいる。
頭が状況整理を開始する。
「あ~蓮見のお母さんなら今日私のお母さんと飲みに行くんだって。だから蓮見のご飯も作ってあげないさいってお母さんに言われたの。後蓮見のお母さんからの伝言で「今日の私はいつも以上に抜け目ないわ!」だって」
ようやく蓮見の頭が事情を理解する。
そもそもそれならそうと一言言って欲しかったと思う蓮見であった。
「てか美紀のお母さんもお母さんだよな」
リビングにある椅子に座りながら蓮見が言う。
「んっ?」
「だって可愛い一人娘を平然と男の家に送り込んで料理を作ってやれって」
「まぁね。でもお母さん多分そこら辺何も心配してないんだと思う。小さい頃は毎日一緒にいたしお母さんが蓮見を知ってるからね。何より私のお母さんも蓮見が料理できないの知ってるから心配なのよ」
「ならせめて息子の料理を作ってから飲みに行けと俺の母さんに言って欲しいもんだ」
「そうだね~。蓮見のお母さん別に一日や二日食べなくても死なないみたいな所あるもんね」
「ホントそれな。俺はご飯がない生活なんて嫌なのにな……」
「そうだね。でもそれで私の手料理が食べられるんだから感謝しなさい」
蓮見は「そうだな~」と言ってリビングにある机に伏せながら返事をする。
今の蓮見は何だかんだ腹ペコである。
なんたって第二回イベントで初心者でありながら大活躍する程に暴れたのだ。
それは疲れて当然なわけで。
本人は寝ており気づいていないが今も提示板は凄い勢いで更新されている。
提示板では既に蓮見の通り名である【神眼の弓兵】と【歩く天災】の二つ名が合わさり【神眼の天災】と新しい呼び名が生まれていた。由来はKillヒットの眼を持ちながら誰にも予測がつかない行動をすると言った所だった。
美紀は鼻歌を歌いながら料理の片手間にスマートフォンを使い第二回イベント情報共有板をチラチラと確認しながら情報を得ていた。そこでは早くも【最強夫婦】等とも呼ばれており、美紀はつい嬉しくてニヤニヤしているのだ。今は蓮見が来たので平常心を装っているが内心は嬉しくてしょうがなかった。
「いつも悪いな。美紀にはお世話になってばかりだな」
「全然いいよ。どうせ一人分も二人分もそこまで変わらないから」
「そっかぁ。それより何でさっきから鼻歌歌ってるんだ? 何かいいことでもあったのか?」
「別に意味はないわよ。どうせ料理をするなら歌でも歌って作った方が楽しいからよ?」
「なるほど」
蓮見は美紀の言葉に納得する。
それにしても美紀がこうして自分の家にいる事が当たり前になってきている事に違和感を覚えなくなってきた自分が恐ろしかった。人間慣れると何も思わなくなるらしい。周りから見たら違和感があっても本人達の中ではそれが当たり前であると頭が勘違いして違和感がないのだから。
「はい。できたわよ」
美紀の料理が完成してカレイの唐揚げ・野菜炒め・ご飯・お味噌汁を空腹で机の上でだらける蓮見の前に置いていく。食べなくてもわかるぐらいに美味しいとわかる匂いが蓮見の鼻孔をくすぐり始める。
待ってましたと言わんばかりに目をキラキラさせて美紀の準備が終わるのを待っていると正面の椅子に腰を降ろす美紀。
「食べていいよ」
「いただきまーす!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます