第一話
いつもの学校帰り。徒歩での帰宅途中にそれが聞こえた。
【Loading Biometric Information ...】
【Confirmation Completed】
【システム言語を『日本語』に設定】
【この設定は「言語設定変更」と、明確な意志を持って言葉を発することにより変更可能です】
突然と脳内に響く、どこか無機質な音声。
【世界に『迷宮』を設置します。また、それに応じて『魔物』の生産・活動を開始します】
信じられない内容ではあるが、脳内で音声が再生されていること自体がありえないことだ。
【全人類の能力値を数値化。「生体情報確認」と発すると『生体情報』を表示します】
【現在の対応言語は、『
こんな異常に人々はどう反応するだろうか。周りの人達は戸惑い困惑している様子だ。だが、好奇心が勝ってしまった俺はただ冷静に、試してしまう。
「よし、『生体情報確認』」
生体情報
名前:柳田 龍時
職業:学生
HP:75
MP:50
ATK:60
SPD:65
スキル
・器用貧乏 ・体術 ・気配遮断 ・隠密 ・隠蔽
発声とともに半透明のボードが浮かび上がってきた。
「本当に出た。スキルとかも有るのか」
五つもスキルを持っているって凄いのでは?いくつか気になるものがあるが特に『器用貧乏』が気になるな。
「触ってみたら詳細が確認出来るのか?」
独り言をこぼしながら、『器用貧乏』という文字列に触れてみる。
ピロン
ゲームで耳にするような電子音を鳴らしながら、またもや半透明のボードが浮かんできた。やはり、ゲームを参考にしたのだろうか。
【器用貧乏 ・ ・ ・ あらゆる技術に対して才能を得る。しかし、その道の達人には絶対的に及ばない。】
「うーん、昔から何でも人並み以上に出来たけど、一番になれなかったのはこれのせいか……」
だけど、この世界には『迷宮』ができたらしい。もし魔物と戦うことになったらどうだろう。あらゆる武器に適性を持ち、他の人よりはある程度の有利さがある筈だ。
そう考えると早く『迷宮』なる場所に行ってみたくなるな。
「よしっ、外に出てみるか。結構混乱してそうだけど」
呑気なことを考えながら玄関から外に踏み出す、その前に、護身用として包丁を持つことにした。
「何が起こるか分からないし、隠し持っていたほうがが良いよな」
そして近所を歩き回りながら様子を窺っていると、
「誰か!誰か助けてくれ!!」
何と、会社勤めの社畜のような男性がゴブリンみたいな生物に襲われているのではないか!
まだ夕方近い時間なんだけど仕事終わったのかな?いや、どうでもいいか。早く助けてあげないと。
「あのう、すみませーん!」
魔物との睨み合いをしている男性に呼びかけると、物凄い勢いで振り向いてきて、
「よかった、早く助けてくれ!」
そう叫びながら走り寄って来た。
つまり、
「ちょっ!?おまっ!こっち来んな!魔物もついてくるじゃねえか!」
いつの間にか増えていたゴブリンの群れも追いかけて来たのだ。
「いやいや、お前助けに来たんじゃないの!?何で逃げるんだよ!」
あ、そうだった。『気配遮断』と『隠密』を使ってみるか。そう明確な考えを持った瞬間、
「っ!?消えた!?おい、どこに行ったんだよ!!」
考えただけで発動されるのか。それに目の前で使っても効果有るようだ。強すぎるな。
「とりあえず後ろに回って、この包丁で殺すか……」
ゴブリンが通り過ぎるのを待った俺は、後ろのゴブリンの首を掻っ切りながらついて行く。どうやら気付かれていないようだな。
「よし後1匹だな。……あ、目合った」
残り一匹になった事に気付いたゴブリンと目が合ってしまった。どうしよう。これってバレてるよな。
ん?あれ、俺のこと見えてない?まさか、
「俺には気付いていないのか?じゃあ、このまま倒せるのか……」
初戦だったけど何か余裕だったな。
「あの男の人は俺の姿を見て逃げて行っちゃったな。ゴブリンの死体はそのままだけど」
気にしなくても良いか。いや、俺自身が魔物を殺すことに大した拒絶が無かったことには驚いたが。
「んー、疲れたなぁ。今日は早めに眠るか」
と、家に帰って返り血を浴びた服を着替えていると、
【ダンジョン外での魔物の出現・討伐を確認】
また、あの声が聞こえてきた。というか確認するの遅すぎじゃね?
【魔物出現座標の修正の実行を完了しました】
あ、ダンジョン外で魔物が出るのって不具合だったのか。修正早いなぁ。
【不具合下の戦闘勝利に伴い、戦闘勝利者に特別報酬を付与】
お?これはまさかのチートかな。期待しちゃうよ?
【個体名『柳田 龍時』に対し特別報酬を付与…報酬を選択してください】
その声が聞こえると共に正面に半透明のボードと文字が浮かび上がってきた。
「こんな不具合はもう無いと思うし、この報酬は最初で最後だろうな…」
さて、何を選ぼうか
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