拍手 106 二百三「大演武会」の辺り
大歓声の中、緊張感はいや増している。
「おい、大丈夫か?」
「だ、だだだだだだ大丈夫」
「いや、駄目だろ……」
彼は、今年初めて大演武会に出る新人だ。剣の腕はいいのだが、如何せんあがり症らしく、先程からガチガチに緊張している。
同僚は先程から彼の緊張を解きほぐそうと色々話しかけているのだが、一向に効果が出ない。
緊張さえなければ、実力を発揮出来るのだが。どうしたものか。
そんな彼等の脇を、すたすたと通り過ぎる人影があった。
「あ」
二人して、その姿を目にする。小柄な体型にふわふわとした髪。一見しただけならこの場にそぐわない美少女と思うのだが、彼女の正体を知っている者は、その姿に背筋が凍る。
異端審問官カタリナ。凄腕揃いと言われる異端管理局の中でも、最強と言われる少女だ。
殺した異端者は数知れず、ついこの間も西方の国の一つを潰したという噂が流れた程だ。
異端管理局も、毎回大演武会には全員が出る。その異様な攻撃力で、異端者に恐れを抱かせるのと、他国が聖国に刃向かう気をなくすようにする為なんだとか。
だから、毎回この大演武会には各国から重要人物が賓客として招かれる。今回も、貴賓席には多くの王侯貴族が姿を見せているだろう。
大演武会の表の主旨は、普段鍛えてる成果を見せる事にある。だからこそ、本来は聖堂騎士団の模擬戦が中心なのだ。
「……あんな小さいのに、堂々としてるよなあ」
「そ、そうだよな! 大丈夫! 彼女より、お前の方が大人なんだから! な!」
「う、うん……」
思いがけないところで、異端審問官に救われた。普段は教会内部でもあまりいい顔をされない管理局なのに。
もうじき、大演武会の幕が開く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます