第33話 交戦を開始した第1小隊

 第1小隊の複座型機動歩兵『アミュコス』は研究所内の第一層通路にて戦闘型アンドロイド一体と遭遇していた。


 作戦を開始してまだ五分も経過していないのに、これほど早く未帰還のアンドロイドを発見できるとはアヴシャルも思っていなかった。


「IFF(敵味方識別装置)に反応有り。第803アンドロイド大隊のコードです」


 同乗のシーモア伍長がAIの表示する情報を指揮官へと報告する。小隊長座席のディスプレイにも同じ情報が表示されていたから、部下の報告は確認にしかすぎなかった。


 アヴシャルは無表情のままディスプレイの文字と機外カメラから伝送されてくる映像を眺める。


 自立行動プログラムが作動しているのならばなぜ地上に帰還しないのであろうか?


 強制帰還用の命令コードを彼は対峙するアンドロイドに送信した。今回の作戦のためにアンドロイド操作用の命令コードを大隊から提供されていたのだ。


「………」


 送信後30秒経過するがアンドロイドが動こうとする気配はない。


「後方にアンドロイド一体が出現。IFFに反応有り。同じく第803アンドロイド大隊のコードです」


 シーモア伍長の報告が沈黙を破った。


 戦闘型アンドロイドがアミュコスを前後に挟む…包囲する体勢にアヴシャルは何か嫌なものを感じていた。二体のアンドロイドに強制帰還信号を送信するがやはり結果は同じである。


 操縦桿を握るアヴシャルの手には無意識のうちに力が込もり、神経はいやがうえにも高ぶってくる。


「小隊長…」


 実戦経験のないシーモアはこの息詰まるような雰囲気に思わず顔を後部座席に向け弱きの言葉を吐いた。


「馬鹿野郎! こういうときに後ろを向く奴がいるか!」


 アヴシャルの怒鳴り声とアンドロイドの動きは同時であった。


 彼が前席のパイロットに代わり操縦桿を動かしたときには既に遅く、前後のアンドロイドから放たれた高出力レーザーがアミュコスのボディに命中していた。


 機動歩兵はアンドロイドよりもサイズが巨大で、しかも内部のパイロットの防御を重視して設計されてるだけに、対エネルギー攻撃用の装甲諸元には相当なものがあり、アンドロイドのレーザーを一度や二度受けたぐらいではビクともしない頑丈さを誇っていた。


 アヴシャルが操縦桿に備わっている発射ボタンを押すと機動歩兵装備の高出力レーザーが前方のアンドロイドを貫いた。


 同じアンドロイドの高出力レーザーよりも大口径・大出力なだけに破壊力は桁違いだ。


 爆発に惑わされることなくアミュコスを180度回転させるが、背後のアンドロイドを目標を定めるまでの間立て続けに二度の攻撃を受ける。


「くそ! 味方のアンドロイドにやられるとはな」


 アヴシャルは悪態をつきながら高出力レーザーの発射ボタンを押した。

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