第4王女殿下は騎士団(仮)の運営に余念がない

空風鈴

決意と決別

「ノイエ。

私ね、この王国に新しい騎士団を作るの。

貴方、それに力を貸してくれないかしら?」


突然だった。


問い掛けられたノイエは瞬時に硬直する…が、かろうじで思考だけは停止させずに動かし続けた己を称賛した。


アストリア歴923年。


数多の生命が芽吹く新春の、とある日の昼下がり。


場所は、アストリア大陸の中央に位置するアストリア王国。


その王国内の南西端にあるランページュ領の領主の館、つまりノイエの家だ。


領主の館といっても、この街にあるほとんどの民家となんら変わらない造りで、白を基調とした土壁と赤茶色の煉瓦が組み合わせて造られている。


他の家と違いがあるとすれば、建物の広さが2割増しであることと、小さな庭がついていること、少し背の高い生垣に囲まれていることくらいである。


そもそも、このランページュ領自体、著名な観光名所もなくこれといった資源や特産品もない辺境の田舎の領地であるので、その領主の館が質素であっても、それはいたって自然なことであった。


そんなランページュ領主の館の応接室、客席側のソファに座っているのが彼女、すなわちアストリア王国王女アイリーン・フォン・アストリアであった。


彼女は、王国の第4王女であり、王位継承権6位に位置する王族中の王族である。


アイリーンの年齢は18歳、健康的な肌の色、瞳に宿る力強い光、表情や仕草からは自信や負けん気の強さが伝わってくる。


少しクセのあるふんわりとした髪の毛は、所々ピョンと跳ねていて愛らしが、彼女の人となりとその鮮やかな赤色とが相まって、まさに『燃えるような』と形容するのが相応しい。


豊満な胸は女性らしさを主張しているが、身体はしなやかな筋肉を纏っており、彼女がお淑やかな深窓の令嬢という存在ではないことがうかがえる。


余談だが、いつの世も王族というものは、政略結婚が多い正室以外にも、美女(ときには美男)を側室に入れることは珍しくない。


よって、王家の血筋も自然に美形が多くなってくるわけだが、彼女もその例に漏れず、かなりの美貌の持ち主である。


彼女の場合、もう少し淑女らしい立ち振る舞いが身に付いていれば、「美女」の前に「絶世の」という形容詞が付いたかもしれない。


しかし、その立ち振る舞いは「お淑やか」ではなく「破天荒」。


生半可美女であるだけに、その美貌を差し引いて余りある奇行の数々を知る王都の民からは「残念な王女殿下」として有名であった。


今日のいでたちは、服装も外出用ドレスなどフォーマルなものではなく、薄手のブラウスにベスト、膝下丈のボトムスというカジュアルな軽装であるが、それは果たしてこの訪問がお忍びであるためか…。


とにかく、この高貴な身分の御方が先触れの使者も出さず、わずか数人の護衛のみで辺境の領主の館を訪れ、領主とのあいさつもそこそこにノイエを呼び出し、応接室に現れた彼に対する第一声が先ほどの内容だった。


これで面食らうなという方が無理だろう。


しかし、ノイエは脳をフル回転させながら驚異的な早さで立ち直ると、深々と頭を下げる。


この場には父も王女の付き人もいる…どちらの対応が正解なのか、一瞬の逡巡の後…


「お初にお目にかかります。

タルタロス・ランページュが嫡子、ノイエ・ランページュでございます。

王女殿下におかれましては」


「堅苦しいあいさつは抜きにしましょ。

で、貴方の返事を聞かせてちょうだい。

私に力を貸してもらえて?」


ノイエのあいさつの口上を遮り、再度同じ問いを投げ掛けるアイリーンに対して辟易するノイエ。


『せっかく初対面を装った華麗な対応をぶち壊しやがって!

そもそも、新しい騎士団を作るとか何言ってんだ?確かに以前そんなことを言ってたような気もするけど、あれ本気だったのかよ!何考えてんだ!』


と、頭を下げた姿勢のまま心の中で絶叫するノイエ。


彼が立ち直るための契機とするためか、アイリーンの後ろに控えていた執事らしき初老の男が


「お嬢さ…殿下。」


と、彼女を嗜めるように声を掛けた。


すると、暴走していた自分に気が付いたのか、アイリーンは小さく咳払いをすると、わずかに頬を赤らめながら、前のめりになっていた姿勢を正す。


領主であるタルタロスは、この機を逃さず


「ノイエ、いつまでも立ってないでこちらに座りなさい。」


とノイエを自分の隣、応接テーブルを挟んでアイリーンの斜め向かいに座らせる。


同時に、ノイエの母であるシルキスが給仕からトレイを受け取り、テーブルにティーカップを置いていく。


ノイエが絶妙な連携で間を取ってくれた両親に感謝していると、タルタロスは


「領内で採れました茶葉を数種ブレンドしたものでございます。お口に合いますかどうか。」


と、アイリーンに茶を勧めた。


この紅茶は、近年母が茶葉農家と一緒に試行錯誤して作り出したこの街のオリジナルで、近隣でも少しずつ人気が出始めている期待の商品だ。


部屋に漂うフルーティな香りに惹かれ、アイリーンはカップを口に運ぶ。


「…美味しい。」


ホッと一息つき、王宮で愛飲しているものと遜色ない味わいに感嘆した。


落ち着いた様子のアイリーンを見て、タルタロスが


「恐れながら、当家の愚息がこれまで騎士団と関わりを持ったことはございません。

もちろん、真に殿下のお役に立てるのであれば、それは当家にとってこの上ない誉れとなりましょう。

お許しをいただけますなら、いま少し詳しい話をお聞きかせくださいますでしょうか。」


と詳細を求めると、アイリーンは先程までと打って変わって真剣な(先程までが不真面目だったわけではない)面持ちで応じた。


「もちろんよ、ランページュ卿。

私が騎士団を作るのは、当然、他国や外敵の脅威から王国を、そして民を守るためよ。

ただ…残念なことですが、今の騎士団…聖天騎士団はあてにできない。

彼らは、私服を肥やしたり権力闘争に明け暮れていて…本当の危機に国がさらされたとき、彼らは保身のために、躊躇うことなく私たち王族の首を敵国に差し出すでしょうね。」


アイリーンの話を要約すると、こうである。


聖天騎士団は、団長以下52人の騎士で構成されていて、全員が歴代の国王から爵位を与えられている。


そのうちの約半数は領主としてそれぞれの領地を治めていて、戦となれば領地から兵を率いて国民を守るために戦うことが義務付けられている。


これは、この時代の貴族制度を採用している国の典型的な統治システムであるといえる。


ランページュのように、文官でありながら領地を与えられケースも珍しくはないが、いつの時代も王国の領主の過半数は騎士たち武官が占めていた。


そして、騎士のうち領地を持たない残りの半数は、王都の守護という役目を担っていて、戦では王都に駐留する兵を率いて出陣する精鋭である。


…ここで、彼女は紅茶を一口飲んで喉を湿らせると、カップを両手で包み込んで太ももの上に乗せる。


ここまでは、現在の王国の統治体制を確認したに過ぎない。


大切なのはここから…。


アイリーンが持つカップに視線を落とすと、残る紅茶の表面に写る自分と目が合う。


『なんて不安そうで情けない顔なの…。

でも、今日このときが私の出発点。

私は、私がすべきこと、私にしかできないことをやる!』


アイリーンは、一度強く眼を瞑った後、ノイエを見据えて言葉を続ける。


続くアイリーンの話を要約すると、こうである。


このアストリア王国は、元々は小さな都市国家群が周囲の強国から身を守るため合議制の連合国を築いたのが始まりであった。


無事に強国からの侵攻を退けたものの、所詮は自分の利権を最優先に考える各都市の元首たち…他国からの脅威がなくなれば、いずれ醜悪な内乱に至るのは、半ば必然であると言えた。


その内乱を治め、国家を統一した英雄が初代国王であるアストリア一世であり、以来900年以上にわたって王国の統治は続いている。


この地がアストリア大陸と呼ばれているのも、大陸の暦にアストリアの名が冠されているのも、全ては大陸一の強国として恐れられた王国に対する畏敬の念から来ていた。


しかし、長い王国の治世の中で、賢王による統治で国が豊かになることもあれば、暴君が圧政を敷き民草を苦しめることもある。


そして、王国に暴君・暗君が数代にわたって続いた時代に、貴族制度のお約束ともいうべき負の体制が確立される。


すなわち、国王は国の未来を憂いて苦言を呈する忠臣を遠ざけ、自分に媚びへつらう者を重用した。


貴族・商人、武官・文官を問わず賄賂や買収が横行し、あるいは政敵を陥れるための策謀謀略が飛び交った。


ここまでわかりやすく内部が腐敗すると、国が衰えるのも早い。


また、アストリア王国は広大で肥沃な大地に恵まれ、資源も豊富、大陸の中央に位置しており海にも面していることから交通の要所として大いに発展してきた。


そんな王国の国力の低下が他国に知られればどうなるか。


周辺の国は次々に、ときには同盟を結び、こぞって王国に攻め込んだ。


度重なる戦火に王国はさらに疲弊し、次第に版図の縮小を余儀なくされていった。


その後、ようやく王国の暗黒時代が終わり、比較的まともな性格と見識と能力を備えた王、つまりアイリーンの祖父が即位したが…有力な貴族たちは自分たちの利権を守るため、国王に対して不遜な言動に出る。


曰く


「暗君の悪政が民を苦しめ、戦禍を招き、貴重な領地を損なった。

今、王国が滅亡の難を逃れ存続しているのは、我々騎士団が命を賭して国を守ったからである。」


貴族の中でも忠義の厚い者、良識ある者、そして騎士団の中でも不正を良しとしなかったごく一部の騎士が国王を支持したが、それ以外の全ての騎士たちと、国が腐敗した詳しい経緯など知る由もない多くの民は、有力貴族の扇動に乗る形で国王を非難するようになった。


こうして、国王の威信は地に堕ち、代わりに有力貴族が政治、軍事、経済を牛耳るようになっていた。


こうなると、国王といえど貴族の専横を正すのは容易ではなく、騎士団の実権を握る上級貴族たちの協力がなければ、国を守るための兵を動かすこともできない状況にまで追いやられていたのだった。


ここまで話したアイリーンは、残りの紅茶を一気に飲み干し、テーブルの上に置かれたソーサーにカップを戻すと、姿勢を正し、ノイエを見つめる。


「だから、聖天騎士団に頼らずに国を守るための新たな騎士団をどうしても作らなくてはならない。

そして、それを実現させるためには…ノイエ、貴方の力が必要だわ。

ノイエ、どうか私に力を貸し」


「お断りします。」


「ブッフォッフッ⁉︎」


同時にいくつものことが起きた。


まさか、ノイエがアイリーンの話をブった斬って、しかも、にべもなく断るとは思っていなかったタルタロスは、ちょうど飲み下そうとしていた紅茶が気管に入り、咽せて紅茶を噴出させた。


タルタロスの口から放たれた紅茶の奔流は、対面に座していたアイリーンに襲い掛かる。


しかし、時を同じくしてアイリーンの後方に控えていた執事が応接テーブルの端に置かれていたトレイを手に取ると、稲妻の如き勢いでアイリーンの横に立ち、トレイを巧みに操り全ての奔流を防ぎ切った。


咽せ返っていたタルタロスがノイエを見やるが、当の本人は涼しい顔である。


「お前は父を絞首台に送りたいのか?それとも断頭台か?」


「いえ、今のは完全に父上の自業自得だと思いますよ。」


ジト目で見返してくるノイエに、タルタロスは大きなため息を吐いた。


執事は、既に何事もなかったように、いつの間にか彼女の後ろに戻り、先ほどまでと同じく静かに控えている。


しばらく放心状態だったアイリーンだが、ここでノイエに断られたショックからどうにか立ち直る。


「理由を…断る理由を教えてもらえないかしら?」


『ノイエったら何考えてるの!

私がわざわざ王宮から自宅まで赴いて頭を下げてる(正確に言うと頭は下げてはいない)のに、普通それを断る?』


と内心穏やかではなかったが、努めて平静を装って問い掛ける。


すると、ノイエは


「はい。

恐れながら、殿下のなさろうとしていることは、実現は極めて困難…はっきりと申し上げるなら、達成はまず不可能でしょう。

理由はいくつかあります。

まず、一つ。

聖天騎士団は、全員が爵位をお持ちの貴族であらせられます。

しかし、新たな騎士団を作るということは、新たに貴族又はそれに準じる爵位などを与えるということ。

そのようなこと、これまで王国の伝統を守ってきたという誇りと自負を持つ彼らが許しはしますまい。

もちろん、新たに爵位を持つ貴族が大量に現れるということになれば、誇りや自負よりも、彼らが持つ既得権が脅かされないという懸念が最大の障壁となるでしょうが。」


と真っ先にぶち当たるであろう問題について指摘する。


自分たちの利権を守るためなら国王すら貶める。


そんな連中が新たな騎士団の設立に対して、指を咥えて待っているはずがない。


「次に、第二の理由。

一体誰を騎士団の騎士として召し上げるおつもりですか?

本来、国を守る使命を帯び、国王に忠誠を誓い、民草の幸福を第一に考える。

それが騎士・貴族に求められる資質であり役目。

そのために必要な人格、忠誠心、武力、品格や見識などを備えた逸材を数十人集めることができますか?

また、仮にそのような資質を持ち合わせた者がいたとして、有力貴族たちの不興を買うとわかっていて、果たして名乗りを上げてくれるでしょうか。」


王国では、騎士団は通常中隊規模で編成される。6から10人程度で編成される分隊(スクワッド)、それを3つ束ねると小隊(スプラトゥーン)、その小隊が3つで中隊(カンパニー)となる。


つまり、中隊は概ね54人から90人の規模ということになるが、それだけの数の優秀な人材が野にくだっているだろうか。


そして、こちらからの呼び掛けに応じてもらえるものだろうか。


「そして、第三の理由。

実際に騎士を集められたとして、率いる兵はどこにいますか?まさか民兵を徴兵するわけにもいかないでしょう。

そして、仮に兵の目処も立ったとして、彼らの装備や衣食住はどうなさいます?

失礼ながら、現在の王国の経済状況では、数ヶ月間兵を養うことすら覚束ないでしょう。」


現在の王国の経済は一部の有力貴族がかなりの割合を掌握しており、国庫から自由に使える財源には限りがある。


大量の兵を抱えるには、それなりの維持費が掛かるのだ。


「最後に…殿下のお話から王国が危機的状況にあるということはわかりました。

であれば、まず王族の方々が連携し、貴族の専横を抑えるために団結することこそ肝要かと。

そこに私のような者が必要だとは到底思えません。

…殿下は、なぜ私を?」


とりあえず言いたいことを言い切ったノイエは肩の力を抜き、紅茶を飲んで喉を潤した。


さて、いかに計画が無謀なものであるか、ノイエから突き付けられたアイリーン。


ノイエが話をしている間、俯き加減で大人しくしていた彼女だったが…実は怒り爆発寸前で何とか踏みとどまっている状態だった。


『何なのよノイエ!

騎士団の設立が困難な道だといことはわかってるわよ。

指摘された問題についても、ずっと前から何度も何度もシミュレーションを重ねて…今なら8割方解決できるところまで構想が固まってる。

だからこそ、今日こうして貴方を迎えに来たんじゃないの!!何でわからないのよノイエのバカー!」


と、立ち上がってアイリーンは絶叫していた。


『・・・・・・。』


重い沈黙が場を支配する。


アイリーンはゆっくりと椅子に座り直すと


「あの…今、私…何か言いましたか?

…セ、セバス!」


自分の後ろに控えている執事を振り返る。


セバスと呼ばれた初老の執事は


「はい、『…んども何度もシミュレーションを』あたりから実際に御発声されておりました。」


と表情を変えることなく答えた。


アイリーンは、その事実に愕然とし顔を真っ赤にしながらも、何とか正面に体を向け直した。


ノイエは、苦虫を噛み潰したような顔でアイリーンを見つめ、この後の展開に考えを巡らせる。


すると


「王女殿下、恐れながら発言の機会をいただけますでしょうか?」


と声を上げたのは、それまで会話には参加していなかったノイエの母シルキスである。


突然の申し出に驚きながらも、アイリーンは


「もちろんですわ。領主婦人の御発言を妨げる者など、この場には誰も居りませんわ。」


と即座に答え、シルキスの発言を促した。


「ありがとうございます。

では、ノイエ。

貴方、本当に殿下のお誘いを断るつもりなの?

先程の殿下の御発言からして、殿下と貴方は以前からの知り合いね?

そして、さっき一度断ったのは、殿下の御計画がいかに困難なものか、改めて確認するため。

そこまではいいわ。

でもね、王都からわざわざ足をお運びくださった殿下の御要請を本当に断るつもりかしら?

もし、そうではなく貴方の心が決まっているのなら、これ以上レディに恥をかかせるものではなくてよ。」


と、シルキスはノイエの真意を確認した。


さすがは母上だと…ノイエはこの両親の子で幸運だったと心から思う。


生まれてからずっと両親とこの館で暮らしてきた。


街の中を所狭しと駆け回り、同年代の仲間たちと悪さをしては、両親にこっぴどく叱られた。


様々な思い出が詰まった温かい屋敷での家族との暮らし…しかし、そろそろ決別すべきときが来たのかもしれない。


ノイエは、まず先に両親に気持ちを伝えたかった…その場に立ち上がり、ちらりとアイリーンの方を見やると、彼女は軽く頷いてそれを促す。


「父上、母上。急な話になってしまったけど、僕は行くよ。

まだ17歳の若造だけど、これからもっとたくさんの経験を積んで、父上と母上が恥ずかしくない人間になってみせる。

今日、僕の人生の進路は決まった。

その道は無謀なものかもしれないけど…必ずやり遂げてみせるよ。

ただ…王族に与する以上、他の貴族たちはほとんどが敵となるでしょう。

私は、己の信じる道を行きますが、それに父上と母上を巻き込んでしまうのは本意ではありません。

…ランページュの家名は…父上にお返ししようと思います。」


タルタロスの眉がぴくりと動く。


それは、とりもなおさずノイエがランページュ家の家名を捨て、家との関係を断つということであった。


「わかった。今日このときから、お前をランページュ家の一門から外す。

今日からお前は唯の『ノイエ』だ。」


その言葉を聞き、アイリーンは胸が締め付けられる思いだった。


平穏なランページュ家の後継であるノイエを半ば無理やりに家から放逐させるのは、他ならぬ自分の人生にノイエを巻き込んだ結果なのだ。


絶対にこの日の…この光景を忘れないとアイリーンは心に誓った。


シルキスは、ノイエとの別れに涙が止まることはなかったが、その表情は慈愛に包まれていた。


たとえ家名を捨てることになっても、貴方は私たちの自慢の息子であると。


「ありがとうございます。必ずこの国をより良き方向に変えてみせます。

今まで育てていただき、ありがとうございました。」


頭を深く下げるノイエに、タルタロスが声を掛ける。


「事を為すまでこの敷居を跨げると思うな。

ただ…正式にランページュ家として力になれる事があれば遠慮なく言ってくるがいい。」


ノイエは、頭を下げたままの状態で、涙が溢れないようにするだけで精一杯だった。


ノイエは、頭を下げたままの状態で、涙が溢れないようにするだけで精一杯だった。


「ありがとう…ございます。」


頭を上げたノイエに、もう迷いはなかった。


ノイエは、アイリーンに向き直ると、アイリーンも椅子から立ち上がった。


そして、ノイエとアイリーンの人生を決定付ける一言が放たれた。


「不肖ノイエ。

微力ではございますが、今後の人生全てをアイリーン殿下のために使うことをお約束します。」

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