第278話
高速に乗って一時間ちょっと。
俺たちはパトカーに追いかけられることもなく、順調に目的地へと向かっていたのだが……新しいSAができたんだってーという中村の情報と、そこまで急ぐという訳でもないので一度SAによって休憩することになった。
生首はもちろん留守番だ。
クロがしっかり見張っているので逃げ出すことはないだろう。
逃げて野生にでもかえったら酷い事になりそうだから、ほんとやめて欲しい。
SAでの行動だけど、せっかく来たのだからざっと施設をみてまわり、特に目新しいものはないな……と確認したところで、俺はトイレに、中村と遥さんは飲み物を買いに向かう。
「新しいだけあってトイレは立派だなあ……ん?」
でかいし、綺麗だし、やっぱ新しいのはいいね。
古いところだと、掃除はしてはいてもどうしても汚れがねえ……なんて考えながらトイレから戻ると、中村がなにやら露店の前で腕を組んで立っていた。
遥さんは椅子に座ってその光景をぼーっと眺めている。
なにしとんのかな。
「SAで売ってる食い物ってうまそうに見えるんだよな……」
「欲しかったなら買えばいいのにー。まだ出発しないよ?」
「うーん」
なるほど。
SAで売ってる串焼きを買うか悩んでいたのか……美味しそうだけど高いんだよね。
「一本700円……よし、一本だけ買うっ」
まあ中村は買うことにしたようだけど。
「島津くんはいいの?」
「ん、現地ついたら飯食うんすよね? ならがまんしようかなーって」
遥さんにそう尋ねられるが、ここで食べてしまうとお昼を美味しく頂けないかもなので俺は買わないことにした。
中村? まあ一本ぐらいなら大丈夫じゃないかな……お腹いっぱいでお昼食えなくても俺は知らんっ。
「ひさしぶりにカニ飯食べようかなって」
「いいですね。有名ですもんね、カニ飯」
「うんうん」
場所的に海岸沿いでカニもとれる。さらには観光客がくるということで、俺たちが向かう先はカニ飯で有名なんだよね。
何度か食べたことはあるけど、値段も手ごろで美味しかった記憶がある。
遥さんがいうように食べるのは久しぶりなので楽しみだ。
中村は知らんっ。
それから串焼きを5本ほど食べ終えた中村を回収し、目的地へと向かったのだが……俺と中村、それに遥さんもだが、見えてきた光景にちょっと驚きを隠せないでいた。
「やべえ、店潰れまくってんじゃん」
「前に見た時より過疎化が……」
「やってるかなー……」
以前、店があったとこが空き地になっていたり、建物は残っていても廃墟と化していたり、営業しているのかどうか分からない店舗やなにやら……高速できたことで大分廃れたとは聞いていたけど、ここまでとは思っていなかった。
一部有名な店はまだしっかり営業しているようだが、嘗て見た光景との違いに結構なショックを受けた。
ダンジョンができれば、この過疎化も多少改善されるとは思うけど……大丈夫かな。余計過疎ったりせんよな。ちょっと不安になってきた。
「あ、やってる」
ふいに遥さんがそう呟くと、ウィンカーをつけてハンドルをきる。
どうやら目当てのカニ飯屋さんはやっていたようだ。
とりあえずご飯を食べて気持ちを落ち着かせよう。
クロと太郎には悪いけどまたお留守番してもらおう。
幸いクロはずっと寝っぱなしだし、太郎は太郎で最初にはしゃぎ過ぎたからか、こちらも寝に入っているので留守番するのは問題ないだろう。
生首はなんか静かなのが不気味だけど、留守番しとけよというと素直に頷いていたのでこっちも大丈夫……と思う。
「うまっ」
「カニ飯初めて食ったかも」
「まじでか」
カニ飯おいしいな。
言い方悪いかもだけど、さすが生き残っているだけあるというか。
前に食べたのよりずっとおいしい。
しかしお店やっててよかったな。
これでダンジョン内で飯が食えなくてもなんとかなる。
あとは宿をどするかだけど……。
「予約なしでも泊まれるんすね」
「夕飯はつかないけどねー」
宿の確保は問題ないらしい。
部屋も空いているので特に予約も必要ないとのこと。
果たして喜んでいいのかどうか悩むところだ。
てか、そもそもあの生首がダンジョンについて詳しく話そうとしないのがいけない。
秘密にしたいのは分かるけどさー、せめて宿とか食事とかその辺りの話しぐらいはしてもいいと思うんだ。
まあ、ここまで来ちゃったら今更だけどね。
「んで、このあとはどこ向かえばいいの?」
カニ飯を食い終え、持ち帰り用のカニ飯を生首に渡して、この後のことについてたずねる。
大まかば場所は聞いてるけど、詳細については聞いとらんのよ。
ここからがんばって探せとか言ったら外に放り出してくれる。
「あっちあっち。そこ曲がってまっすぐ行けばすぐだよ」
あっちと言われ、三人して生首が示した方向へと視線を向ける。
……私道? なのかな、結構細い道だな。まっすぐ行くと海だぞ。
この生首、一体どこにダンジョン造りやがった。
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