第273話

昼食はたまにはということで、喫茶ルームですませたよ。

サンドイッチとか全部美味しくなってたので割と満足。


「狩るか否か……」


今何をしているかというと、クロがお腹も膨れて眠くなってきたということで、ちょっとお昼寝タイムなのだ。

俺は寝てないけどね。


俺はクロのあごをコネコネしてる。なんか気持ちいいらしい……手を止めると『にゃっ』と抗議されるので、止めるに止められない。


このままぼーっと過ごすのもありだな、と思い始めたあたりで……ふと、あたりをキョロキョロと見渡す遥さんの姿をみつけた。


向こうもこちらに気付いたらしく、ぱっと笑みを浮かべ、手を振りながらこちらへと向かってくる。

俺のこと探していたのかな?


「あ、島津くんいたいた。やほー」


「あ、北……遥さん、どうもっす」


いつも通り北上さんと呼ぼうとするが、目をみて遥さんと呼び直す。

すると遥さんは満足気にうんうんと頷くと、俺の向かいに座る。


……喫茶ルームってBBQ広場並みではないけど、昼時には結構人がおるんだよね。

まわりに視線がぐっさぐさ突き刺さるぜえ……ここで羨ましかろうと開き直れるほど俺の精神はタフではないらしい。

くっそ恥ずかしいぞっ。これ絶対顔が赤くなってるやつじゃん。


「やほー。昨日のだけどねえ、みんな印象はよかったぽいよ?」


「そ、そうですかっ」


おお。


「つきあうのにも異存はないって。いやーよかったねー」


「おおぉぉぉ」


よっしゃ! これで両親公認だっ。

あとはちょっとずつ距離を詰めていければ……。


「そんなわけでー。今度の休みの日にさー、ちょっと二人でキャンプでも」


ガンガンきますねっ??

やっぱ遥さん肉食やぞ。


しかしですね。

さっきも言ったけど、ここって周りに人が結構いるのですよ。


「お前らその手の話しは二人だけの時にしろよ……」


ほらぁ突っ込まれたーっ。

ほとんどの人が苦笑いで済ませてくれてるけど、一部の人はちょっと殺意のこもった視線向けてきてる。

あれ、絶対独身の人だ。



視線はスルーすることにしたぞ。

とりあえず二人でキャンプとか、そのへんの話しは後でするとして……まあ、自然と話題はダンジョン関係になる。


「そろそろ次の階層にいくのー?」


「そのつもりっす」


23階に潜り始めて結構経ってるからね。

今までの感じから言っても、そろそろ次に行ってもおかしくはないし、ちょっと気になっていたんだろう。


「ほう」


「……カードあと一枚でたらですけどね」


周りのテーブルでくつろいでいた隊員さん達の視線が俺に集中したので、苦笑いしながらそう返しておく。

ああ、そうそう。遥さんと話している間に、いつも隊員さん達も集合してたんだよね。

全員が同じテーブルってわけじゃないけど、みんな近くにはいる。



「カードはなあ」


「あれのせいで羊が嫌いなったからな……」


「羊は本当に辛かったですね……」


やっぱカードを集めるのはキツイ。

隊員さん達も結構なトラウマになってる……羊は確かにきつかったなあ。

何がつらいって、電撃ダメージがキツイんだよ。

数をこなさないといけないのに、ほぼ毎回ダメージくらうから他の敵と比べても大分きっつい。

正直いって、あれをまたやれと言われたら絶対断るね。


「次はなにが出るんだろうな?」


カード集めから話題を変えるように、太田さんが別の話題をふる。


「陸タイプ、水タイプ、空ときたら……なんすかね? 火とか?」


「火はちょっと暑そうでイヤっすね」


「立っているだけでじわじわ死にそう」


みんなもカードの話題から移りたかったのだろう、次々話題に乗っていく。


「たしかに……その場合、氷童カードが役に立ちそうっすね」


そんな皆には悪いけど、カードの話題に戻しちゃった。

でもあいつは狩るのはそこまで大変じゃないらしいし、許してっ。


「そんなカードもあったな……」


「あのカード使えるんすか? 味方巻き込むイメージしかないんすけど」


「シーサーペントのとき使ってただろ」


「そういえばそうでした」


効果だけ見れば有能なカードなんだけどね。

範囲が広いし、敵味方関係なく被害がでるという……もし有効に活用するのであれば、パーティ全員が靴を宝石で強化しておく必要がある。


カード集めの比じゃないぐらいきっついね!


まあ、俺とクロの場合はシーサーペント戦で分かるように問題なく使えるから、仮に次の敵が火に関する相手だとしても問題はない。

……面倒そうだからできれば相手したくはないけどね。


フラグかな?



結局この日はみんなとだべって時間を過ごして、午後からはお休みとなった。

たまにはこういうのも良いと思います。




それから数日、ひたすら飛竜を狩って過ごし、週末になった、

今日は動画の撮影日ということで、事前に用意しておいた飛竜の生首がバックパックに入っているのを確認していると、ふいに背後から声がかかる。


「なにやら楽しそうなことをしているみたいだねえ?」


「おう、大人しく留守番しとけよ。飯は冷蔵庫の中にあるから。んじゃな」


誰かと思えば生首だった。

てか、家の中で話しかけてくるとしたらこいつしかおらんのだけどな。


ここ最近大人しくゲームしているし、今日も留守番しておけよと一言残して、バックパックを背負って玄関に向かおうとするが……足にグルグルと髪の毛が巻き付いてきた。



「あっぶな!?」


危うくこけそうになったぞ!


「ちょっと私の話を聞いてくれてもいいじゃないかと思うんだけどねえっ!?」


「やかましいわ、どうせろくなことじゃねーだろっ」


何すんだこのやろう! と足に絡み付いた生首を引きはがしにかかるが、抗議するかのように声をあげる生首。

てか、首だけで器用に動きまわるんじゃないっ、足に髪の毛からまる!


「インパクトが欲しいんだろう? だったら」


「生首を映せるわけねーべ! てか、はなせっ」


やっぱろくなことじゃなかった!

インパクトあろうがBANされるだろうっての。中村泣いちゃうぞ!



「その飛龍だって生首じゃないか! 差別だ。差別だよ、私はショックを受けたよ。酷い話じゃないか、同じ生首なんだから私が出たって問題ないだろう?」


「問題ありまくりだボケェっ」


問題しかねえっ。

見た目は人の生首を放送するとかもうダメだろ。



「くそ生首め……どこから情報入手しやがった」


思ったより引きはがすのに手こずった。

さすがに髪の毛を引きちぎるのはためらいがある。


……なんとなく、ちぎってもすぐ生えそうな気がしなくもないけど。


しかしなあ、最近ゲームに集中して大人しかったから油断してた。

あのまま大人しくしている分には問題なかったんだけど……ん?


「……そういやそろそろできるのか、あれ?」


ゲームをやってるのって、ダンジョン製作にいかすためだよな。

それを止めてこっちに絡んできたってことは、なにかしら目途がたったとかだろうか?


「できたら5人で潜ってみてもいいかもな」


今なら動画のネタにもなるし。

あとで話してみようっと。

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