第220話


自ら率先してぶっさすとか、まず出来るもんじゃない。


なんて俺が少しベジタリアンを見直していると、休憩所の入り口……あ、俺たちが今いるのは、アメリカの特大ダンジョンの休憩所ね。 特大ってだけあって、休憩所もかなり広いんだ。それこそ1000人ぐらいなら入れそうって程度に。


んで、その休憩所の入り口から、ちょっと階級高そうな人が入ってきたんだ。

政府高官とかそんなんじゃなくて、たんに軍の偉い人って感じ。


その人は休憩所の……なんか、演説する台みたいあのがあるな。そこに向かうとマイクに向かい話始める。



「それでは本日の日米合同訓練の内容について説明する」


挨拶もそこそこに、合同訓練の……訓練だったのか、まあいいや。その、合同訓練の内容についてざっと説明が始まった。

勿論、みんな事前には聞いているのだろうけどね。みんな知ってはいるだろうが……ってやつだ。


まあ、内容をざっくり言うと。

先行組同士でパーティー組んで、レベル上げと階層更新がんばれよ。装備は用意してあるから借りるのを忘れずにな。それじゃ、諸君の検討を祈る。

そんな感じだ。ざっくりしすぎな気もするけど、大体これであってるんだからしゃーない。


さてさて、それじゃさっそく装備の用意しますかね。

借りないのかって? だって、用意してある装備って10階で買えるやつなんだもん。


「せっかくだから良いの買っちゃおうかなと」


「日本にも特大ダンジョンはありますからね、いずれ向こうを攻略することを考えれば借りるよりは買ったほうが良いでしょう」


俺たちが装備を借りに行かないのを、ちょっと困惑した様子でウィリアムさんが見ていたので、俺と都丸さんとで理由を説明しておく。


別に装備借りるのは強制じゃないしね。

性能良いのがあるならそっちを使いたいし、どうせ今後も自分で使うことになるんだから、使い込んで強化したやつを手元に置いておきたいじゃん?


ここで借りた装備を使うと、せっかく強化した装備を返すことになっちゃうからな。アメリカとしてはそっちの方が嬉しいんだろうけどね。


ウィリアムさんは、それを聞いて納得したように頷いていた。


「確かにその通りかと。経費として申請して頂ければ、全額は無理かも知れませんが出ますので忘れずに申請をしてくださいね」


お? 経費で落ちるのか。ポイントで帰ってはこないだろうから、お金になって戻ってくるんだろうか。

なかなかありがたいね


と、言う訳でさっそく装備を探すとしようか。


「猫用のあるかな……ん、いいから自分の探せって? ほいほい」


クロの装備探そうとしたら『うにゃっ』と注意を受けた。

自分の分は自分で探すから、俺もそうしろとのことだ。ちょっと残念……まあでも、クロは装備のセンス悪くないし、きっとよさげなものを見つけることだろう。


俺は俺で自分のを探そっと。



つーわけで、Dパッド起動して装備欄をみていたのだけどね。

特大ダンジョンで装備可能なのってどんなのがあるのかなーって思っていたら……。


「おぉ、パワードスーツっぽい」


鎧って感じではなかったね。

自分より一回り大きな、駆動付きの骨格を纏うみたいな感じ? これはこれで中々恰好よくて良いと思います。


ここでちらっとウィリアムさん達をみたら、特大ダンジョン用の装備に着替えるところだった。

個室じゃないのね。まあ見られるからこちらとしては良いんだけど。


んで、ウィリアムさん達も同じようにパワードスーツぽいのを着ていたから、基本特大ダンジョン用の装備ってこの手のタイプなんだろう。


頭とお尻に申し訳程度に耳と尻尾がついてるのが、なんかうける。



さて、それじゃ……どれにしようね?

いやさ、一応パワードスーツにもいくつか種類があるんだよ。おそらく違うのは見た目だけで、性能は変わらないと思うけど……これは中々センスが問われるんじゃないだろうか? ちょっとカンニングしちゃおう。


「皆さんどれにしました? とは言ってもそんなに種類なさそうですけど」


教えてみんなー!


「まあ、無難にこれかな」


そういって都丸さんが操作していたDパッドを見せてくれた。

うつっていたのは、ウィリアムさん達がつけているのと同系統のものだ。

深い階層の装備だけあって、都丸さんが見ていた装備のほうが強そうに見える。

実際にはウィリアムさん達の装備は改造とか諸々やってあるだろうから、どちらが強いかは一概に言えないのだけどね。


まあ、やっぱ無難にこのタイプだろうなあ。

となると俺も同系統で揃えるべきか……と、考えていたら、俺たちの様子をみに来たのか、ウィリアムさんが近付いてきて、俺たちが見ている端末に、すっと指を近づける。


「こちらではないのですか?」


そういってウィリアムさんが指し示したのは、日本風の……いわゆる当世具足みたいな装備であった。

これかー……実は俺も悩んでいたんだよね。実はこれ、めっちゃ恰好良いのだ。所々に駆動部分が見えていて、鎧武者と機械が合わさったように見えて……すごく良いのだ。語彙力しんでるけど、すごく良いのだ。


ならなんでそれを選ばないかと言うと。


「ちょっとコスプレ感があって、恥ずかしいかなと」


それな。

じゃあ、パワードスーツはいいのかって話だけど、ほら、もうウィリアムさん達が身に着けてるし?


「猫耳尻尾生やしておいて今更感がすごいっす」


「……まあそうだな」


「そっすね……」


ああ、はい、確かに。

言われてみれば猫耳尻尾もそうっすね……みんなもう麻痺しちゃってるよね。これもコスプレっちゃコスプレなのに。俺? 俺は別に最初から抵抗は無かったよ。


「じゃあ……これにするか?」


「良いんじゃないっすかね」


まあ、そういう事であればと、俺たちは当世具足のような装備を選ぶことにした。

そして実際に身に着けたりしていると、まわりに居た他の隊員さん方も、『じゃあこっちもあれにするか』みたいな感じで同じ装備を選び、結局自衛隊員は全員鎧武者のような姿になることになる。ただし耳と尻尾付き。


さて、これで俺と隊員さんの装備は決まった。

あとは……。


「クロは何かよさそうなのあった?」


俺がクロに声をかけると、クロは無言でスッとDパッドを差し出す。

見てみろってことかな。どれどれ。


「ん……え、これが?」


……Dパッドにうつっていたのは、なんて言ったらいいのだろうか。

あれだ、ペット用の二足歩行の着ぐるみだ。


むかーし、ケルベロスっぽい装備があったけど、見た目はあれが近いかな。

ただ、こっちは武器扱いではないからか、首が3つのとかは無いけどね。


いやー……この中から選ぶしかないのか。どれもひどいぞ。

なんとかましなのを選ぶしかないけど……ねえ?



「クロがやさぐれてしまった」


「これはひどい」


「アマツさんの趣味は分からんな」


結局クロが選んだのは、ちょっと着物っぽいやつ……なんだっけね、これ。

陣羽織とか、陣傘とか言われる奴かな? あれをデフォルメしたのを想像してもらえば良いと思う。

正面からみると、二足歩行のにゃんこがそんな格好している風に見えて、なかなか似合うと思うのだが、いかんせんやさぐれてしまっている。眼光だけで人を殺せそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る