第200話

装備のお試しも素材集めも終わり、その日はそこで解散となる。

お昼を一緒にと考えたが、午後から用事がありあまり時間がないって人が多かったので、大人しく家に戻ってご飯を食べることにする。



んで、お昼ご飯だけど……特に用意もしてないし、お留守番してもらったクロにちょっと豪勢なお昼でもとBBQ広場に向かったのだけどね。



「大根うまー」


「でしょー。いい感じにできたんだよねー」


北上さんが自分用にと煮物作ってて、ご相伴に預かることになりもうした。


煮物おいしいです。

マーシーに頼めば色々作ってくれるんだけど、こういった和風の煮物はさすがに無理なんだよね。

自分で作るのも大変だし、すごくありがたい。


「ごちそうさまでした」


「お粗末様でした」


ついつい食べ過ぎて5合炊きのご飯がなくなってしまったよ。


あ、ちなみにクロはマーシーが焼いたドラゴンステーキに、ドラゴンのちゅーるをかけるとかいうやべーの食べてたよ。

うにゃうにゃいってたので美味しかったんだろう。



さて、お昼も食べたしあっちをやらんとな。


食器類を片付け終えた俺とクロ……それに北上さんとでBBQ広場のあるところへと向かう。


「もうどれに乗るか決めたんだっけー?」


向かう先は飛行機のところだ。

免許とる勉強しつつ、実際に乗って練習しちゃおうと思ってね。


「ええ、あれにしようかなーと」


「おおー。そっかー、これにしたのかー」


選んだ機体をみてふんふんと頷く北上さん。

クロはあまり興味無さそうに後ろ足で頭をかいてる。ついでに欠伸も。


クロとしては飛んで目的につきゃどれでも良いって感じなんだろうねえ。


ただ俺としてはそれ以外にも拘りたいところである。


「荷物いっぱい詰めそうですし、離着水もできますしね」


そんな訳で選んだのはUS-2だ。

もし陸に着陸できない場合は着水出来ちゃうし良いと思うのですよ。

エンジンが4発あるし、多少止まっても飛べるしね。


あと荷物もいっぱい詰めるのが良い。

キャンプ道具一式とか、なんなら一人乗りボートとかバイクとかなんかもう色々詰め込める。


航続距離も長いから、多少迷っても余裕あるのが良いね。


実際に買うとなるとおそろしい値段がするけど、ポイントですんでしまうので問題なしだ。


「それじゃ行きますか。いざって時は飛び降りる方向で」


「このたっかい機体を乗り捨てってのも凄い話だよね……」


「まあ、ポイントはありますしせっかくなんで練習したいなーと。……免許取り立ての人間が操縦する飛行艇とか乗りたくないですよね?」


「そりゃねー」


ちなみに俺は自分の操縦テクニックについてはまったく信用していない。

なにせこれが初飛行だからね!


機体には悪いけど、離着陸失敗したら即離脱するつもりである。



とりあえず乗り込んで、操縦席に座る。北上さんは副操縦席でクロは膝の上である。

一応マーシーがマニュアル用意してくれたので、それを読みながらなんとか操作を続ける。


するととりあえずエンジンはついたので、あとは離陸するだけなのだが……どれだ。


「おお……エンジンついた……えっと、これかな」


離陸モードにするスイッチが天井にあったので、ぽちっと切り替える。


するとエンジンが唸りをあげ、背中がシートにぐっと押し付けられる。

そしてほんの10秒かそこらで感じるふわりとした浮遊感。


「え、あ、もう浮かんだ!?」


飛ぶの早すぎない??

まだそんなに速度出てないんだけど……やべえな、話には聞いてたけど、まさかここまでとは思わなかったぞ。


「ほあー……すっごい」


北上さんも下を呆けた様子で眺めている。

乗ったの初めてだったのかな?まあ、そりゃそうだよね。隊員さんだからって全員が乗ったことある訳じゃないか。


「島津くんすごいじゃん。ちゃんと飛んでるよー!」


「俺もびっくりっす……」


今のところちゃんと飛んでるんだなこれが。

絶対落ちると思ってたから本当に驚いた。


まあ、一度飛んだ以上は着陸しなきゃいけない訳で、やばいのはそこだろうな。

頭から突っ込むか、尻をするか……こわいこわい。




とりあえず10分ほど遊覧飛行をしたので、そろそろ着陸をしようかというお話に。

うーん、こわい。


「着陸しまーす」


「おー」


北上さんは割とリラックスしているようだけど、俺は笑顔を浮かべながら内心ドッキドキしてる。

せめて着水すればいいと思ったけど、湖にはやべー生き物居るし。海にも絶対いるでしょこれ。


もう着陸するしかねーのですわ。



そして地面が徐々に近づいて……覚悟を決めて着陸するか。なむさん!


覚悟を決めた俺は操縦桿を倒し……いや倒しちゃあかんやつだこれ。



「んきゃっ」


ゆっくり降りていた機体がかくんと高度を落とし、地面にタイヤ触れ機体が一度大きく跳ねる。


「……」


「……とまった?」


幸いなことにタイヤがどこかに飛んで行くとか、そんなこともなくどうにか機体は無事止まってくれたようだ。

ちょっとばかし操縦ミスった気がするけど、ちょっと可愛い悲鳴が聞こえたのですべてよし。


「とまった……こっわ!一回跳ねましたよね!?」


「こりゃーいっぱい練習したほうが良いねえ」


よしじゃないな。

実際まじで怖かったし、さっきからクロに頬をぺしぺしとはたかれてるし。

てめーなにしとんじゃぼけーみたいな目でみられてます。ごめんなさい。


まじめに練習しよう……本番は荷物も色々積むし、ミスったら壊れてしまうかも知れない。

中に乗ってる俺たちはともかく、荷物はそこまで丈夫ではないのだ。


とりあえずは毎日練習することにしようとオモイマス。




その後何機か機体をおしゃかにしながらも、俺と……北上さんは練習を続ける。

私も操縦したーいって話だったもんで……俺より着陸上手くて泣きたくなった。隠れてがっつり練習しようと思う。


それで、夕方になったところでいったん休憩しようとなったので、一度家に戻ることにする。

ご飯食べきっちゃったから炊かないといけないしね。



「ん、クロのカリカリがもうないぞ」


ついでにクロのご飯も器に入れておこうと思ったんだけど、いつの間にか空になっていたようだ。

これ絶対こっそり食ったやつでしょ。


「ちゅーるはおやつでしょ。買いにいかないとなー」


ちゅーるがあるから平気とクロはいうけど、あれってどっちかと言うとおやつ枠だよね。

ご飯はご飯で用意しないとダメだと思うのだ。


「んじゃ行ってくるね。お留守番よろしくー」


と言う訳でクロにお留守番を再びお願いし、俺は近くのスーパーへと向かうのであった。




大量のカリカリを袋に詰め込み、スーパーから家へと帰る俺であったが……。


「ん?なにあの人ずっとこっち見てる……こわっ」


なんかこっちをじーっと見てくる人に気付いてしまう。

まじ怖い。


あれかな、俺がお金持ちになった情報とか漏れてそれ関係だろうか?

家の近くにはこれないから待ち伏せしてたとか?こわいこわい。


しかしこの人なあ。


「……どこかで見たことあんなあ」


見覚えがある気がする。

それもつい最近。


近付くにつれて、顔がはっきりと見えてくる。数メートルの距離まできてやっと表情がはっきりと見えた……顔は、日本人ぽいけど……異常なまでに整ってる。異常すぎるぐらいに。



なんでこの距離にくるまで分からなかった?


俺はすぐに鉈を抜こうとして……手が空を切る。

……いくら俺でもスーパー行くのに鉈は持たないのだ。

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