第161話
「悪いなまじで奢ってもらっちゃって」
叙〇苑で食べ放題してきた。
久しぶりに普通のお店で焼き肉食べたけど、やっぱこっちはこっちで美味しいね。
諭吉が結構な枚数飛んでったけど、まあ気にしない。
「いいよいいよー。ま、オークション終わったら今度は中村に奢ってもらうけどねっ」
「おう!いいぞ、儲かったらな!」
今度はそっちの番だぞーと言う俺に対し、笑顔でサムズアップする中村。
だが、その顔が不意に曇る。
「……儲かるよね?」
「たぶん」
不安そうな所悪いけど、たぶんとしか言いようがない。
相場なんて無いしねえ。
「売れないと生活がまじでやばい……」
「切実だねえ。実際いくらで売れるかは……中村、自分が買うとしたらいくら出す?」
「俺?そうだなー……5階のは配布されるから除外するとして、10階のポーションなら10万とか……そもそも金の無い俺に聞くのが間違ってね?身内もそこまで必要そうなの居ないし」
俺の質問に対して自分ならと答える中村であったが、特に急いで欲しい理由もなく、金も無い中村だとそこまでの額を出す気にはならないのだろう。
「まあ、仮で考えると……ポーションあれば介護とか必要なくなるとかなら、百万単位なら出すんじゃない?年間それぐらい掛かるって話っしょ?」
「あとはでかい病気持ってる人とか。元々治療費とかも掛かってそうだし、それが無くなるか減ると思えば出す気がする。5階のってそこまで効果ないっしょ?……まあ、そんなもんかな」
なら自分以外であれば?と考えた中村……予想は100万単位なら出すんじゃ?との事である。
俺もそれぐらいなら出すんじゃないかな?って気はする。
でも実際に出せるかどうかとなると……今後供給が増える事を考えて、もう少し下がるかも知れない。
あ、でも金持ちであれば若返りや病気に治すためにそれぐらいポンッと出しそうだよな。
……うん、分からんな!
「ふーむ。オークションまでに10階までは行きたいところだね」
分からんので、とりあえず10階のポーション確保出するところまでは進めたいね。
5階のポーションも売れるとは思うけど、配布が決まっている以上は安くなると思うからね。
「そうだな!」
「頑張れば行けると思うよ。宝石なくてもドラゴンの素材で装備改造済みだしね」
牛さん結構強いけど、中村の装備であれば手足を失うような怪我はしないだろう……骨折ぐらいはすると思うけど。
オークションに間に合うようガンガン狩らないとだね。
とりあえずは俺たちだけの時はレベルアップと階層の更新を主として、それ以外は隊員さん達と一緒にダンジョン潜る感じかな。
中村も今後のことを考えればカードは絶対揃えた方が良いしね。
と、言うわけで日は変わり、皆とダンジョンに潜る日がやって来ましたよっと。
「人数的に大かなー」
「そうだな」
今日のメンバーは俺とクロと中村、それに都丸さん太田さん北上さんである。
中だと正直温すぎなので大に潜ることにしたよ。
1階だと大でも温いんですけどね。
まあ、主目的はカードなので問題なしである。
「とりあえず今日中に一人一枚確保したいところですね」
「時間かけるとしんどいもんねー」
俺の言葉に大きく頷く隊員さん達。
いやー、皆カード集めには苦労したからねえ……弱い敵をひたすら狩り続ける作業感がかなーりキツいんだよね。
「それじゃサクッと行きますかー」
なのでサクッと終わらせて次の階層へと進みたい。
とりあえず少し進んだところで砂トカゲが飛び出してきたので、これを瞬殺する。
そして直ぐに次へと向かうのだが……その前に。
「クロお願い」
実はモンスターを効率良く狩るのに考えていた事が有る。
クロにお願いすると、クロはその場で前足をもにもにしたかと思うと、勢い良く上空へと跳び上がる。
そして空中でクルッと一回転し、すとんっと地面に降り立った。。
「次向こうです」
そしてクロが前足でビシッと示した方向、そちらへと向かい皆で走って向かう。
すると進んだ先には30体程の砂トカゲの群れがいた。
「よし、クロお願いね」
そしてさくっと殲滅し、再びクロに跳び上がってもらう。
「ドロップなし」
「よし、次に行こう」
倒してからドロップを確認するまで少し時間が掛かる。
その間にクロに索敵をしてもらい、直ぐに移動して……と繰り返すことで、このフィールドタイプのダンジョンフロアでも効率良く狩りを進める事が出来るだろう。
現にうちのダンジョンでRTAやった時よりも、良いペースで狩ることが出来ている。
この分なら今日中に全員分のカードを出すのは難しくないはずだ。
……物欲センサーが発動しなければ。
「でた」
30分ほど経ったところでやっと一枚目が出た。
昼前に終わるかなこれ……。
「……手分けします?」
ぶっちゃけ敵が弱いので、6人全員で固まって動く必要は無いのだよね。索敵も……まあ、やろうと思えば皆ある程度出来るし。中村以外。
「それが良いかもな」
「6人だし3つに分かれますか」
「どう分ける?」
「ぐーちょきぱーで合った人」
個人的な欲望に基づくと、クロか北上さんと一緒が嬉しいのだけど……さすがにちょっとそれは言えない。
なのでここは運に任せようと思う。
誰と組んでも戦力的には問題ないしね。
とりあえず盾で目隠し……盾の下でグーかチョキかパーを出し合って、盾を避けて組合せを決める。
俺が全力でみると何を出すか事前に分かっちゃうから……その手があったか!だがもう遅い……ぐぬぬ……ぬ?
「……クロのそれは何だろ……あ、グーですか」
クロも出してはいるんだけど、ぱっとみ何か分からない。
裏からみたら、肉球がぐっとなっていたのでグーだったらしい。
「中村か……」
「お前かよ」
何度かやった後、結局こんな組合せになった。
クロは北上さんとだった。悲しみ。
おのれ中村め……まあ、いいや。
明日は明日でまたばらけて狩る事になるだろうしっ。
ちょっぴり悲しいだけである。
とりあえず皆と別れ、狩りを開始した俺と中村であったが……。
「まっ……まって、くれ。……し、死ぬ」
走っているだけで中村が息も絶え絶えになっていた。
「拾ったポーション飲んでいいのに」
「ぜぇ……はぁ……も、勿体ないだろ」
中村はポーションを飲んだら体力も回復することは当然知っている。
だが、オークションで売るつもりなのか狩りの最中に入手したポーションに手を付けるうもりは無いようだ。
使った方が効率良いと思うんだけどね……おっと。
「飲んだほうが結果としていっぱい稼げそうだけどー……ん、出た出た!2枚目やっと出た!」
ついに念願のカードがでた!
実は皆と別れてから、既に一枚出しているのでこれで二枚目だったりする。
これとりあえずの目標は達成した訳だけど……。
「おっしゃああああぁぁぁあ解放される!!」
「されないよ」
「なんで!?」
「まだ集合時間まであるし、もうちょい狩るよー。3枚目出るかもだしね」
「……ハイ」
カードの在庫はあるに越した事は無い。
目のハイライトを引き摺るように連れ、次のモンスターの群れへと向かうのであった。
「そういや」
「ん?」
追加でもう一枚のカードを入手し、集合場所へと向かっている最中、ふいに中村が何かを思い出したように話し始めた。
「この前ネットでダンジョンについて調べてみたんだけどさ。掲示板がかなーり荒れてたな」
「ほう?」
中村が言っているのはネットの巨大掲示板の事だろう。
しかし荒れているとはどういう事だろうか?話題がつきないだろうなーとは思うが、荒れる理由がいまいち分からない。
「俺たちの事も話題になってたぞ……て言うか主に島津とクロだな」
「え、まじで」
「まじ。あれだけ目立ったんだしそりゃ話題になるべ」
「うへー……」
なんで俺たちが……と言うつもりは無いけど、まさか主な話題になっているとは……やはり一人だけ猫耳つけてるのはダメだったのだろうか?やはりアマツにお願いして、性能抑えた猫耳も購入可能にして貰うしかないか……?
しかし俺を含めて皆がどう話題になっているのか気になるな。
写真とか晒されてないと良いけど……注意されたのって講義の中でだから、部屋に入る前にどこかに投稿されている可能性あるんだよなあ。
うーん……しゃあない、家に帰ったら調べてみるかー。
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